4人が本棚に入れています
本棚に追加01.意識
修一朗は時間さえあれば、スマホに向かって小説を執筆している。高校の教室は昼休み。生徒たちがにぎやかに会話し、自分の席で昼寝しているものもいる。そんな教室で、スマホにつないだイヤホンを耳にさしたまま、修一朗は昼休み時間を使って熱心に執筆中。
そんな修一朗の姿をそっと見守る美里と初音。
「本当にいつも熱心ね」と、初音があきれたように言った。
「うん。あの熱心さはすごいね」と、美里が相槌を打つ、
二人の視線の先にいる修一朗は、真剣なまなざしでスマホを見つめ、言葉を思いつくたびに指を動かし続ける。そんな姿をいつまでも見ていたい。美里の心の奥底ではそんな思いが熱いくらいに湧き出るばかり。あの真剣な目で自分も見つめられたら……。
「いつも一生懸命に小説書いてるね。小さい頃からそうなの?」
美里の言葉に初音は首を振る。
「どうだろう。もともと本は読む方だったけど、実際に書きはじめたのは文芸部に入ってからかな」
初音は修一朗と幼馴染。小学校、中学校、そしてこの高校も同じ。一方、美里は文芸部に入ってからしか修一朗のことは知らない。美里は小説を読むのが好きだから文芸部に入った。自分でも小説を書くけれど、なかなかうまくはいかない。
そんなとき、美里は修一朗に相談する。
「そうだな……。このシーンはこういうふうに書いたほうがいいんじゃないかな」
「セリフで説明しすぎじゃないかな。もっと行動で示さないと」
修一朗のアドバイスに従って美里は小説を書く。すると、たいていの場合、うまくいった。そんなことが積み重なって、美里は修一朗にひそかに心引かれている。その一方、修一朗が美里のことをどう思っているかは……。
そんなことを考えると、美里はいつも同じ想像にたどり着く。
修一朗は初音のことを意識している、つまりは好きなのだと。だけど、初音の心のうちはわからない。

最初のコメントを投稿しよう!