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若さまは、気難しい。
───私には、お仕えする人がいる。
「若さまぁ!」
18時。
私のお仕えしているご主人さまが帰宅されます。
たとえ作業中であっても猛ダッシュで玄関口まで向かい、お行儀良く両手を揃えてお出迎え。
誰よりも早く「お疲れさまです!」と言いたいから。
そうしないと怒られるわけじゃないけど、いつも疲れた様子の若さまを1番近くで労ってあげたい。
「おかえりなさいっ」
「ただいま」
「いつも通りお先にお風呂でしょうかっ」
「そうする」
「準備できてますっ」
「ん」
会話中足を止めない若さまに小走りでついていきながらサッと除菌シート2枚を手渡す。
若さまはこっちを見ずに片手でそれを受け取って指先から手首まで完璧に、バイキンを滅する。若さまはとっても綺麗好き。
「夕飯は?」
「いい秋刀魚があったので塩焼きにしてみました!」
「いいね」
用済みになったそれを受け取ってから、今度は若様の前に先回りし、鍵を使って部屋のドアを開けた。この屋敷の本館の中で若さまの部屋にだけ鍵がついてる。
当たり前のように中に入っていく若さまにぺこりと深く頭を下げれば、いつものようにヒラリと後ろ手に軽く手を上げる。
ちょっと偉そうだけど…本当に偉い人なんです。
「今日は紅茶ね」
いつもどこかのタイミングで食後の飲み物のリクエストが入る。
今日は今だった。
そして私の顔は綻ぶ。
ビンゴ!そろそろ紅茶だと思った。
若さまの好きそうないい紅茶があったんだよなぁ〜
「あいあいさー!」
嬉しくなってビシッと敬礼すれば、呆れた顔で一瞬横目をよこし、バタンとドアを閉められた。今日も辛辣。

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