月夜の出会い

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月夜の出会い

 12月上旬の金曜日の夜。  職場で忘年会が開催され、俺たち入社1年目の社員は全員参加が必須だった。 「よっ片岡、お疲れ。いい場所教えてくれてありがとうな」  幹事を請け負っていた鈴木先輩が、ご機嫌な表情で俺の肩を抱く。  食事も酒も美味く充分な量で、広間の雰囲気も良く送迎バス付きのお食事処。しかも上司が「ここの刺身は新鮮で酒も美味い。かなりこだわっているな」とご機嫌だったから、幹事としては誇らしかっただろう。 「いえ、俺が家の近くで飲みたかっただけなんで」  入社3年目の社員が社員旅行や忘年会、歓迎会などの企画運用を行うことが慣例となっている。俺ら新人の教育係でもあり大学の先輩でもある鈴木先輩のお力になれて、非常に満足だ。  程よく火照った顔に、夜風の冷たさが心地よい。 「2年後のお前らの代ではこの会場、使えないぞ。我が社のモットー『常に新規開拓』に従って、社員旅行も飲み会も同じ場所には行かないからな」と鈴木先輩。 「大丈夫ですよ、とっておきの場所は秘密にしてあるので」  こんにゃろう、と肩に回した腕を締めようとするが、俺の方が背は高く「おとととと」と2人でふらついた。 「さて、二次会へ行く人はこっちだよー。バスに集合〜」鈴木先輩の同期である女性が皆に声をかける。  二次会の会場は会社の近くのカラオケ店だ。  第二のモットー『こだわりも大切』に従うわけではないだろうが、その場所の二次会は恒例になっているらしい。  会社までの送迎バスに乗り込む者、帰宅のために駅へ向かって歩く者がいる中、ひとり「お先に失礼します、お疲れさまでした」と全く別の方向へ走り出した女子社員がいた。  ―――同期の猪俣香澄だ。  彼女は仕事が出来て優秀だが、あまり人と接しようとしない。  こういった飲み会に参加するのは滅多にないのだが、流石に全員参加と言われて断るほどではないようだ。  彼女の実家は遠く離れていて、確か会社の近くで一人住まいしているはずだ。  その彼女がどこへ?

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