~プロローグ~

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~プロローグ~

1944年6月6日 北フランス コンラタン半島 ノルマンディー オマハビーチDグリーン地区 ABC放送のブィレーヌの詩、最後の節が読まれたと同時に連合軍は、フランスに居座るドイツ軍に対して反抗作戦を開始した。 ミラー大尉率いる第2レンジャー大隊C中隊は、揺れる上陸用舟艇でオマハビーチの攻撃担当地区へ向かっていた。 「左舷隊、右舷隊モタモタするな!油断のないようしっかりやれ!」 平均年齢21歳のレンジャー中隊の若者達を激励した。 「五人がまとまればいい的だが、一人なら弾の無駄だ!」 北アフリカ、シチリア島からドイツ軍と戦っている中隊の先任上級軍曹のホーバットも激を飛ばした。 「銃に砂が入らないよう、常に注意しろ!では海岸でまた会おう」海岸沿いに据えつけてるあるドイツ軍の88ミリ包が不気味な音を立て着弾し、波しぶきがたった。 その度、レンジャー隊員は近付く死期に顔下にうつ向けた。 「はぁ~」 俺が溜め息を吐いたのは、映画「プライベートライアン」を、セリフを全部覚える程見飽きての溜め息ではなく、この類の映画を夢中になって見ていた頃の自分と今の自分とは比較しての溜め息だ。 この夢中になってた頃、俺は高校に入学したての頃で、部活に勉強にと何事にも夢中な時期だった。 今は多忙な仕事、マンネリ化した彼女との恋をしていた。 あの時は初めて付き合った彼女、何もかもが新鮮に思えた、手酷い別れ方をさせてしまった彼女との思い出、だけど今もたまに思い出すと懐かしく・・・マンネリ化した彼女よりもずっと愛せるような、無駄な時間を過ごさずにすむ気がしてきた。 「シュボッ!」 今は年に一回会うか会わないかのバイク仲間と作ったジッポで火を着ける。 愛飲のポールモールのパッケージ。 物思いにふけていたら、気が付いたら映画は上陸作戦が終わり、夥しい数の死体が波打ち際に漂いながら、軍曹がミラー大尉に「物すげぇ光景ですね・・・」 「ああ、確かにな・・・」 「ふぅ~」俺は溜め息を吐いた、今度はタバコの煙も混じっていた、煙で少し淀んだ目の前のビデオデッキの巻き戻しのスイッチを押していた。
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