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プロローグ『放課後、三人の秘密』
放課後の光が、教室の窓から差し込んでいた。
オレンジ色の陽射しの中、百彩朱依は机に頬をつけて、ぼんやりと空を見上げていた。
「しゅい~、また寝る気でしょ」
声の主は白石紫音。
紫色の瞳がきらりと揺れて、朱依の頬を軽くつつく。
「だって、紫音の声聞いてると眠くなるんだもん~……」
「それ褒めてるの? それともディスってるの?」
「えへへ、どっちも~♡」
その後ろで、静かに本を閉じたのは翠弥鳴瀬。
窓際の光に照らされた薄緑の髪が、風に揺れてきらめく。
「まったく……。放課後の教室で寝るとか、子どもかお前は」
「なるせまでぇ~、しゅいはもう高校二年生だよ?」
「なら少しは落ち着け」
呆れたように笑う鳴瀬の声は、やわらかくて心地よかった。
三人は、小さいころからずっと一緒だ。
笑うときも、泣くときも、いつも隣にいた。
それが当たり前で、永遠に続くと思っていた。
――でも。
最近、ふとした瞬間に胸がきゅっと締めつけられる。
紫音の笑顔を見たときも、鳴瀬の指先が頬に触れたときも。
どうしてこんなに、心臓がうるさいんだろう。
「……ねえ、二人はさ」
朱依がつぶやいた。
「“好き”って、どういう気持ちのことを言うの?」
紫音と鳴瀬が、同時に顔を上げた。
沈黙の中で、時計の針が一秒だけ鳴る。
放課後の教室。
三人だけの空間に、淡い恋の気配が静かに満ちていく。
――これは、幼馴染たちが「恋」に気づくまでの物語。

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