第八話 知らないうちに神獣王

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第八話 知らないうちに神獣王

「くっくっく」 「ぎゃははははははは」 最初は我慢しようとしていたようですが、兵士とステラさんとメイドの4少女がとうとう笑い出しました。 「ちと、聞くが、デミル殿。神域でずーっと5年間も暮らしていたと言う事じゃが、恐ろしくは無かったのかのう」 「ぜんぜん恐くなどありませんでしたよ。動物たちは大人しいし、森は豊で静かに暮らせました。神域の動物たちが暴れているのなら僕が行きましょう。きっと大人しくなるはずです」 「あ、あのぅ。あなたは本当に逃亡勇者様なのですか?」 兵士が聞いて来た。 「ふふ、僕は人間がなぜか恐いのですが、動物は全く恐くありません。お食事を食べさせて頂きましたので、お返しにひと働きしましょう」 「なに、ほんとうか? それは心強い!!」 じいさんが心からうれしそうに言った。 そんなに神獣が恐いのだろうか? 「あの、私も同行してもよろしいですか?」 ジュラさんが目をキラキラさせて聞いて来た。 丁度、動きやすそうな服も着ています。 まるで、こうなる事が分かっていたような服装です。 「構いませんよ。じいさん、馬車とかはあるのですか。あるのならステラさんとメイドさん達も一緒に行きましょう」 「な、なんだってぇー!! それはいけない! 危険すぎる。相手は神獣ですぞ!!」 兵士は驚いて、怒ったような口調で大反対した。 まてまて、神獣ってそんなに恐ろしいのか? 僕にとっては、犬や猫程度にしか感じ無かったぞ。 全く別のものなのか。神域にいるのが神獣なら、僕が普通に捕まえて食っていた奴らのはずだ。 まさか違うのか? 少し不安になってきた。 「よい!! わしも同行しよう。きっと面白い物が見られるはずじゃ」 爺さんが兵士を一喝した。 兵士はまだ何か言いたそうだったが、爺さんに言われたら黙るしかないようだ。 兵士を一喝すると、爺さんはワクワクする子供の様に、いそいそと戦支度をはじめた。 「では、いこうかのう」 じいさんとジュラさんと兵士は、騎馬に乗った。 僕は馬に乗ったことが無いので馬車に乗せてもらった。 馬車にはメイドの4少女、御者はステラさんがするようだ。 ステラさんは、なんでもできるなあ。 なにげに1番すごい人のような気がする。 「うおおーーーっ!!」 「ぎゃああぁぁーーっ!!」 しばらく道を走ると喚声が聞こえてきた。 「おおおっ!! モルガ騎士団長!!」 どうやら、この同行していた兵士は騎士団長でモルガという名前らしい。 騎兵が1騎モルガさんに近づいて来た。 ボロボロの姿だ。 ――えーーーっ! まてまて、神獣にそんなにボロボロにされたのぉー?? ちょっと待って、それはきっと僕の知らない神獣かも。 いまさら後悔した。 たぶん、僕の知らない暴れん坊の神獣だ。 来なければ良かった。 僕がそんなことを心で考えているとは知らない、美少女メイド4人が僕の顔を期待の目で見てくる。 「状況は?」 「はっ、既にほぼ全滅です」 ――えーーっ! 僕は驚いた。 仕方が無いので、こっそり馬車の窓から状況をのぞいてみた。 ――えーーっ! やっぱりだ。 やっぱり、あいつら、僕の知っている神獣だ。 僕が神域で暮らしていたときに、僕の家のまわりに住んでいた奴らだ。 なら、何も恐れることは無い。 「みんな、ちょっと僕は行って来る。ここで大人しく待っていて下さい。危ないのでここから出てはいけませんよ」 美少女4メイドに少しかっこうをつけて言ってみた。 「はいっ!!」 美少女メイドさん達は、上目遣いで良い返事をした。 ふふふ、本当は全然危なくありませんよ。 あいつら程度なら、むかって来ても瞬殺出来ます。 余裕です。そうですねえ、日本で例えるなら、蚊ンスをつぶす程度です。 「ステラさんも、中で窓から見ていてください。危険ですので馬車からは出ないでください」 「はいっ!!」 ステラさんも素直に返事をしてくれた。 頭の良さそうな、社長秘書のような美女だ。 「ジュラさん、じいさん。行ってきます。2人もここから動かないでください。危険ですからね」 ふふふ、危険を強調しておいた。 それだけ言うと僕は走りだした。 後ろをモルガさんとボロボロの騎兵と、じいさんとジュラさんがついてくる。 って、あんたら、今ついて来るなって言いましたよね。 聞きゃあしねえ。 僕は走る速度を上げた。 馬では、追いつけないようだ。 僕が4人を引き離し、戦っている兵士と神獣の所に近づいた。 「…………」 戦場と化していた荒野が、静まり返った。 まるで戦場が凍り付いた様に動きを止めた。 そして、視線が僕に集中する。しばらく時間がとまった。 僕の姿を見て、神獣達が平伏しているのだ。 「す……すごい」 追いついてきたジュラさんが、小さな声で言った。 僕は声を出せないでいた。 一体何事が起きたのだろうか。 そういえば、食べようとして剣を振り上げた時に、神獣達が命乞いのためか僕に近づいて平伏する事があった。 僕も鬼じゃ無いから、その都度見逃していた。 窮鳥懐に入れば猟師も殺さずと言うことわざの実行をしただけだ。 神獣王だけは最後まで、平伏はしなかったなあ。だから食べたけど。 「むう、すごい光景じゃ」 じいさんが、驚きの表情をしている。 「お爺さま、見てください。ドラゴンもいます」 「むう、本当じゃ」 「ドラゴンは、頭が良いと聞きましたが、話ができるのでしょうか? それともこのドラゴンはバカだから話せないのかしら」 「なんだとー! 小娘ーー!! あんまり、なめとると殺すぞ!!」 「きゃっ!」 いつの間にか、ジュラさんは僕のすぐ後ろに来ていて、僕に捕まって悲鳴を上げた。 「うわぁ、すげーー。とかげがしゃべったぁーー!!」 僕は驚いて声が出てしまった。 でかいトカゲが、悲しそうな目で僕を見た。 「私だけではなく、この中には話す事が出来る者はいます。人間の言葉は全員が理解出来ます。理解出来る者だけで神域を降りてきました」 「あの、ドラゴンさんは人間の姿になれると聞きましたが、あなたはバカだからなれないのですか?」 ――ぎゃあぁーー!! ジュラさん、言い方ーー!! ――いや、ジュラさんは、わざと挑発していますね。 「おまえ、小娘!! まじ殺すぞ!! 良く見ておけ!!」 「きゃっ!」 ジュラさんは、またわざとらしく悲鳴を上げて、僕に抱きつきました。 その間にでかいトカゲは女の子に変身しました。 「えーーっ!!」 全員が驚きの声です。 ドラゴンが、銀髪の薄らピンクの入った長い髪の美少女になったからです。 「なにがえーーじゃ!! 小娘ーー!! 神獣王様から離れぬかーー!!!!」 「えーーっ!!」 また全員が驚きの声を出しました。 ――うん、どうやら僕は知らないうちに神獣王になっていたようです。

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