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その日以降、上野は舞と少しずつ会話をするようになった。彼女が大学生であること、コーヒーはブラックが好きだということ、犬よりも猫派だということ……他愛もない会話だったが、不思議とつまらないとは思わなかった。
そんな、ある日。何のことはない、ただ偶然に、見えてしまった。彼女のスマートフォンの待ち受け画面。そこには―――
「俺……?」
思わず声に出てしまい、ハッとする。舞の表情は変わらない。ただジッと黙っていた。
「……もっかい見せてくれる?」
「……」
黙ってスマートフォンの画面を向ける。よくよく見てみると、上野ではなかった。雰囲気は驚くほど似ているが、よく見ると顔はあまり似ていなかった。
「兄です」
「お兄さん?」
(あー……なるほど)
上野は納得がいった。なぜ自分なんかと、ずっと抱いていた疑問。
「お兄さんの代わり?」
「……っ」
舞の瞳が揺れた。こんな動揺を見せたのは、初めてかもしれない。
「いや、別に責めてるとかじゃなくてね。うーん……」
これは極めてセンシティブな問題かもしれない。どうしたものかと言葉を探していると、「ごめんなさい」と小さく舞がこぼした。
「……店閉めた後、話せる? ちょっと待たせちゃうけど」
努めて優しく問いかけると、舞は小さく首を縦に振った。

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