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今出演しているバラエティ番組の内容は、昔の知り合いと対面するという企画だ。
相手が誰なのかは本当に知らされず、語られる昔のエピソードで相手を当てて欲しいと言われた。
一応、性別だけは公開され、曇りガラスの嵌ったボックスの向こうに、男性と判るシルエットが映し出されるたのだが、影だけではさすがに誰かなんて判らない。
古い友達? 仕事で知り合った人? それとも…。
視界の質問に相手が答え、それを聞きながらあれこれ記憶を辿る。その内に一人、該当するならこの人、という面影が浮かんだのだが、その人だけは絶対にないと断言できた。
だって、その人はもう亡くなってるから。
その人物はかつての俳優仲間で、金のない時代に苦楽を共にしたのだけれど、外国でのし上がると言い出し、単身渡米した。けれど向こうで事故に巻き込まれ、若くして亡くなったのだ。
古い話だし、当時はろくに知り合いもおらず、彼のことを知っている人間なんてまずいない。だけどこれまで聞いたエピソードは、術でが彼との思い出ばかりだ。
もしや、彼は本当は生きていた? と一瞬だけ思ったが、遺体が日本に戻ってきた後、ご両親の手で執り行われた葬儀には俺も参列したし、棺の中の彼も見た。
彼が生きている筈はない。断言できるに、次々彼とのエピソードトークが語られ、シルエットの人物がそれに対応する。
いったい、今から俺は誰と対面するんだ?
総てが俺の思い違いで、まったくの別人との記憶だったと、いっそ、そんなオチであってくれ。
ご対面…完

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