第1話 アルス・アマトリア

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第1話 アルス・アマトリア

 神原 秋也(かんばら あきや)は、ワインを飲み干したグラスをローテーブルに置くと、うんと伸びをした。  宵の口から、だらだらと飲み続け、結局一瓶開けてしまった。  どさりとソファに背を預け、ベリーショートの黒髪をガリガリと掻く。 「明日も仕事だし、もう寝るか」  そう考え始めた矢先に、突然ドアが開け放たれた。 「ぃよぉ、秋也! お前、明日デートするんだってぇ!?」  大声と共に転がり込んできたのは、幼馴染の一本木 拓斗(いっぽんぎ たくと)だった。  幼稚園から始まって、こうして社会人になった今でも続く、腐れ縁だ。 「何だ、お前は。ノックもせずに!」  固い事言うな、と笑う拓斗の顔は薄ら赤く、息は酒臭い。  どうやら、飲んだ挙句にやってきたらしい。 「相変わらず、酒癖の悪い奴だ」 「はぁ? 俺はぁ、まだまだ酔ってなんかいねぇよ」  いかにも、酔っぱらいが言いそうなセリフだ。  秋也は、再び髪をガリガリと掻いた。 (黙っていれば、それなりにイケメンなんだが。この男は!)  切れ長の一重まぶたが涼しい秋也に対して、拓斗は目鼻立ちのハッキリした顔立ちだ。  和風のクールなイケメン・神原さん。  ラテン系の陽気なイケメン・一本木さん。  社内では、こんな具合に評判が良い二人なのだが、浮いた話に発展しない。  その理由は、もう一人の幼馴染にあった。

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