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「──リーダーは、どうしたい?」 「……え?」  隣に座った鶴居さんは、柔らかい声のままに尋ねた。 「どうしたい、って、」 「上役たちの意見はもうウンザリするほど、朝から聞いてるからさ。でも、この『デフェール』っていう新しいブランドを創り出したのは、羽曳野ちゃんでしょ? リーダーは今、なにを思ってる? 一般論じゃなくて、羽曳野ちゃんが一番やりたいことは何?」 「私は、」  SOKIという会社を好きになって、働けることになって本当に嬉しかった。私の大事な居場所。大切な仲間もたくさんいる。それは変わらない。大事にしたい。でも。 「……この会社と同じくらい、守りたい人が、います」  ────茜。    こぼした言葉の先に浮かぶ人物を、私はずっと、どうしても忘れられない。  じわじわと、まぶたが熱を帯び始めた。隣の鶴居さんが、どこかほっとしたような息をこぼすのが分かった。 「そっか。じゃあ、そうしようよ」  そして、「ランチに行こうよ」くらいの軽い返事をされて、自分が言い出したくせに面食らう。瞳ににじむ情けないものを、慌てて拭い去る。 「……で、でも、私は、蘇芳に守られてばかりで。ちゃんと、彼を守れたことがありません」  俳優を目指していた時も、私とのゴシップ記事が出た時も。────蘇芳は、いつも私を助けて、守ってくれたのに。 「羽曳野ちゃん。いつもいつも、“うまく”守らないといけない?」 「え?」 「『守りたい』ってその想いだけで、充分に誰かの支えになれる時があるよ」 「……そうでしょうか」  本当に? 結局また、うまくできないかも。私が何かを足搔いたところで、こんな大きな会社の決定は何も変わらないかも。それでも。────「蘇芳を守りたい」って、その気持ちだけなら、ずっと昔から持ち合わせている。  ナインズとの会議は、明日。私に、悩んでいる時間はない。  すっと立ち上がって「鶴居さん協力していただけますか」と尋ねると、やっぱり彼は「おっけ~」といつものごとく軽く、だけど何よりも心強い返事をくれた。

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