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「大丈夫です。ゆっくり来てください」  駅のブロンズ像の前、私は一文字ずつ声に出しながら、彼に向けたメッセージを打ち込んでいる。先ほどの連絡によると、乗っていたタクシーが渋滞に巻き込まれてしまい、到着時刻が読めないとのことだった。彼からのメッセージには汗の絵文字が多用されている。焦ってるんだ。きっと今頃、彼の頭の中は私でいっぱい。つまり、愛されてるということ。そう思ったら、私はこの時点でかなり満足してしまった。 「続いては、今日の占いです」  そんな中、イヤホンから聞こえたその言葉に反応して、画面を指でシュッとスライドさせた。ニュースが終わってちょうど占いコーナーが始まるらしい。 「まずは八位から十一位を見ていきましょう」  アナウンサーの声を合図に、画面がパッと切り替わる。私は食い入るようにランキング表を見つめたが、自分の星座はまだ入ってないようだった。今日は彼との大事なデートの日。特に気合いを入れなければいけない。でも大丈夫。家を出る前にもちゃんと占いをチェックしてきたのだがら。パンツスタイルでビシッと決めるつもりでいたら「ラッキーアイテムはワンピース」だって言われて少し焦ったけど、なんとかワンピースも用意できたし、よく見ればこちらの方が断然私に似合っていた。スマホ越しに揺れるレースの素材に、余裕の笑みを浮かべる私。しかしそのとき、私の耳にとんでもない言葉が飛び込んできた。 「最下位は、ごめんなさい、射手座のあなたです。青色は運気が下がるので身につけない方がベター。ラッキーカラーは赤色です」  その瞬間、サッと血の気が引く。スマホのすぐ下では、水色のワンピースが静かに揺らめいていた。

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