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高校生の時、クラスに、かなり目立つ奴がいた。
不良とかではないけれど、優等生かどうかと聞かれたらやんちゃ寄りで、発言も行動も何かと人目を引いていた。
そいつと、この前ばったり会ったんだが、別人かと思うくらい影が薄くなっていた。
正直、声をかけられても誰だか判らなかったし、名乗られた時にはあまりの違いに驚かされた程だ。
あんなに目立ってた奴が、こうまで存在感のない、影の薄い人間になるのか。
しばらく立ち話をして別れたけれど、去って行く後ろ姿が侘しくて、何だか憐れにすら思えた。
何があったのかは知らないけれど、人間て、変われば変わるものだな。
そんなことを思っていた時、気づいたんだ。そいつの足元に存在しているそいつ自身の影の側に、何かがへばりついているのを。
そこそこ距離ができていたからはっきり何とは断定できないけれど、その何かが微かに動くたび、へばりつかれた影の色が薄くなるのが遠目でも確認できた。それと同時に、かつてのクラスメイトの存在感もますますなくなっていくのも。
何かに寄生され、影を吸われている。そのせいであいつは影の薄い奴になった。そう直感したよ。
追いかけて足元の何かのことを伝えようと思ったけれど、人混みに紛れたクラスメイトは、探そうにもまるで存在感がなく、見つけることはできなかった。
それでもと、何とか連絡を取ろうとしたけれど、かつての同級生達の誰一人として、今のあいつと連絡を取れる奴はいなかった。
この先も、あいつはあの何かに影を吸われ続け、ますます存在感のない人間になっていくのだろうか。あるいは、もう影を吸えない状態にされて死…。
この先、死んでしまった時はむろん、あいつがずっと生きていたとしても、影が薄くなりすぎで、こちらからはあいつを認識することができない。
きっとそうなるだろうと、憐れな予感が胸に湧いた。
影が薄い…完

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