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隣の席の同僚のスマホ。たまたま目にしたロック画面の画像は、閉じた扉の写真だった。
その時は特に何も思わなかったけれど、数日後、また目にした同僚のスマホの画面は、少し扉が開いたものに変わっていた。
あれは前と同じ扉か? それがちょっとだけ開いている。
時間の経過で、少しずつ扉が開く動画を画面にしているのだろうか。
変わった趣味だなと思ったが、人の好みに口を出す気はないので、それに関して同僚に何か聞くことはなかった。
その後も、たまに目にするスマホの画面は、同じものらしき扉の画像だったが、見かけるたび、扉の開き方は大きくなっていた。
そしてこの前見かけた時、扉は完全に開いていた。
扉の向こうには何もなく、背景と同じ真っ黒な空間が見えるばかりだ。
開いて、多分これからはゆっくり閉まっていくだろう扉の画像。そう思っていたのに、夕方、隣の席に放置されたスマホのロック画面には、完全に閉まった扉が映し出されていた。
開くまではゆっくりだけれど、完全に開いたらすぐに閉まる。そういう動画なのかな。
さすがにそろそろ、どういう意図でこの動画をロック画面にしているのか気になり、同僚に聞いてみようと思ったけれど、どこで油を売っているのか、退社時間になっても同僚は姿を現すことはなかった。
そして、この日を境に同僚は会社に現れなくなった。
自宅にも戻っておらず、上司の話では、実家の両親にも何の連絡も入っていないらしい。
何かの事故か事件に巻き込まれた可能性があり、近く、実家から警察に捜索願が出されるそうだ。
それはともかくとして、いつの間にか、隣の机の上にあった同僚のスマホはなくなっていた。
おそらくは、姿を見かけなくなった日に同僚が持って帰ったのだろうけれど、そもそもあの日、勤務時間の途中からいなくなった同僚を、職場の誰も見ていないのが気になる。
午後の仕事の途中に消え、それきり姿を消した同僚。そして、いつの間にかなくなっていたスマホ。
…あの日、画面の扉が開いた。その向こうへ同僚は行ってしまった…なんてのは、さすがに飛躍しすぎた思考かな?
同僚が姿を消してから一か月近くが経過し、みんな心配しながらも、同僚の仕事をそれぞれ分担したりして、不在の状況に慣れだしている。
もうしばらくすれば、同僚はもう完全に戻らないものとみなされ、俺達の生活の中からその存在は消えていくだろう。
あの日目にした、スマホ画面の閉ざされた扉。ふとそれを、この先の同僚の未来のように感じた。
画面の扉…完

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