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1.ペットボトルを/開けて飲む
少年に手渡したばかりのカフェオレのペットボトルが、再び僕の手の中に戻される。
暑いから、のどが渇いていたんじゃなかったのか。『ミルクコーヒー』と言われたのに、『カフェオレ』を買ってきたからだめなのか。
「これ、あけて。飲みかたわからない」
麦わら帽子の広いつばを両手で少し上げて、こちらをまじめな表情で見てくる。
僕は手もとがよく見えるように、少年の目の高さで、ゆっくりとペットボトルのふたを開けた。
「パキッ」という音に、びくりとして麦わら帽子が揺れる。
僕はしゃがみこみ、ペットボトルを傾けて、ひと口飲んだ。
「……甘い」
僕はいつもは、カフェオレに砂糖は入れない。冷たさはいいが、慣れない甘さに眉を寄せる。が、仕方ない。
小さな手にペットボトルを渡す。
少年は両手で持ちながら、慎重に、すするように飲む。
「四十五年前から来たんじゃ、わからないよなぁ」
僕がつぶやくと、少年は「ストローがあるといいね」と大人びた口調で言った。
夏が終わりかけていた。
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(415文字,現代ファンタジー)
お題: ペットボトルを/開けて飲む
2025.9.22.

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