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箸が使えないヴォルのためにフォークを貸してやり、深冬はもうひとつのカップ麺を作った。
それから狭い部屋でテーブルを挟んで座り、ふたりでラーメンを啜った。
ヴォルは深冬が職場でもらったものの、大き過ぎて着れずにしまっておいたLサイズのジャージ上下を、キツキツのツンツルテンで着ていた。
絨毯の上に胡座をかいて座り、猫背気味になりながら、一心不乱にラーメンを啜っているヴォルを、深冬はまじまじと見つめた。
深冬が風呂で丹念に洗ったおかげで艶々のサラサラになった長い黒髪と、頭から伸びている立派な角。鋭い牙。
自分は異形の者ーー魔王と向かい合ってカップ麺を食べている。
なんとも非現実的で不思議な夜だった。
「みー、ふゆ……おまえは複数の魔道具を所持し、今日初めて会ったばかりの私に食事を振る舞ってくれた。もしかして相当な金持ちなのか?」
それを聞いて深冬は再び苦笑した。
「……発音が難しいなら"みー"でいいよ。残念ながら俺の生活レベルは底辺中の底辺だよ。この部屋を見ればわかるだろ。寝室兼、食堂兼、リビング。これが俺のすべて」
深冬の声には自嘲の色が見てとれた。
けれど、ヴォルが抱いた感想は違うものだった。
「すべてがコンパクトにまとまっていて機能的だ」
「……金は、無い。貧乏暇なしってやつだよ。今日はたまたま休みだけど、明日は仕事に行かなきゃ」
深冬がテーブルの上に箸を置くと、ヴォルは興味津々といった顔で言った。
「どんな仕事だ」

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