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本棚に追加やきもち②
◇◆◇◆◇
「――ていうことがあったんだ」
石井が微笑ましく報告すると、向かい合う数学担当教諭の山崎はあきらかに面白くなさそうにした。眉をぎゅっと寄せて、苦い顔をしている。
学校を出たところでなかば強制的に車に押し込まれ、山崎の自宅に連れていかれた。石井が文句を言わないのは、いつものことだからだ。
「だから俺とのランチタイムはなしになったわけ?」
「そういうことだね」
ネクタイのノットを緩める石井の手を、山崎が掴む。掴まれた力強さを躱すように手を握り返し、微笑みかける。
「可愛いよね、高校生って本当に純粋」
「ふうん」
やはり面白くなさそうな山崎に、噴き出しそうになるのをこらえる。こういうところが可愛くてたまらないのだ。
「やきもち妬かれたいんだって。どう?」
「は? やきもちくらい俺だって……」
「僕が他の人とふたりきりになってもいいの?」
「させると思うか?」
触れそうになった唇も躱すと、山崎の表情がいっそう苦々しいものになった。なんとなく今日は山崎を翻弄したい気分だ。いつもすぐにベッドに押し倒されてなだれ込むけれど、少しくらいは、じらしたっていいだろう。けっこう悪い男かもしれない。自分に苦笑しつつ、山崎の手から逃れる。逆にそれが山崎の闘志に火をつけたようだ。
「俺の愛って軽く見られてる?」
「え?」
「わからせてやらないといけないかな」
「え、え……?」
足払いをされ、左脚の支えがなくなる。かくんと崩れそうになった身体を支えたのは、山崎の腕だ。石井の腰を抱き、にやりと悪人顔で笑む。数学担当のくせにやたら身体能力が高いのを忘れていた。
「やきもち妬かせたかったんだろ?」
「や、山崎先生?」
「明日が日曜日でよかったな。俺の気持ち、じっくり教えてやるよ」
こういう男だった、と今さら思い出す。それでも石井が逃げ出したら逃がしてくれるのもわかる。両腕を伸ばして山崎の首にまわし、顔を引き寄せる。
「じゃあ、たくさんわからせて?」
「…………はあ」
こうやって結局俺が負けるんだよな、なんてぼやいているから、おかしくて噴き出す。そう簡単に勝たせてあげない。
終

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