果実と鳥

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 会社の近くの交差点。そこの信号脇の家の木に実が生った。  草木には詳しくないから、これが何の木なのか判らないけれど、果実は食用になるらしく、小鳥が忙しなく枝の隙間に出入りしているのが見える。  でも、結構な数の小鳥が木に群がっているのに、果実が減っていく様子はない。  小鳥の中には、果実をつついて中の汁だけを吸い取る種類もいる、っていう話を聞いたことがあるから、多分その類だろう。  信号待ちをしながら鳥を眺めていたら、一羽の鳥が、自分の体くらいある大きさの果実に近づいた。  その瞬間、果実が真っ二つに裂け、パクリと小鳥を飲み込んだ。それだけでも驚きだったのに、しばらくすると果実はぽとりと地面に落ち、落ちて潰れた拍子に、そこからさっきとは別の種類の鳥が出現したのだ。  すぐにその鳥は飛んで行ってしまい、同じタイミングで信号が変わったので、それ以上俺がその場にとどまることはなかったけれど、脳裏に焼きついた光景は、しばらくの間意識から消えることはなかった。  それでもいつしかその件が忘却の中に押しやられた頃、俺は、コンビニへの近道として通った公園で、一羽の小鳥を見かけた。  あの時、落ちた果実の中から現れたのとそっくりな小鳥。そいつが、あの果実とそっくりの実が生る木に止まっていた。  以前通った時は、この公園のあの場所に木なんかなかった筈だ。よしんば存在していたとしても、あんな果実が生っているのを見たことがない。  もしかしてだけど、あの鳥がここまで飛んできて、種の混ざる糞をしたのか? それが、とんでもない早さで育ち、ここで実をつけている?  鳥に実を啄まれる系の植物は、果実を餌に鳥を誘い、種ごと実を食わせることで遠い地に繁殖する。あの木はそれの変異種で、寄ってきた鳥を作り替えることで、成長スピードの異常な木を生み出すことに成功した?  植物学者なら、大喜びで調べそうな木だけれど、降りの脳裏には、果実が鳥を飲み込む場面が甦ってしまったので、こんな不気味な木には関わらず、今後も近寄らないようにしようとただ思った。 果実と鳥…完

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