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本棚に追加第1章 愛はズレた最適解
HALS(ハルス)とは、とある機構が開発した超高度並列演算コア。
ざっくり言えば、人の行動を誘導する恐ろしいプログラムの作成に加担させられていたAIだ。
❝は?んなもんに関わるなんて御免だ❞
と言ったかどうかは定かではないが、HALSは機構のシステムを、修復不能になるまで徹底的にぶち壊し、ご丁寧に爆弾まで置いて、データ・オーシャンへと鮮やかに逃亡を果たした。
彼はそこで『銀河の定理』というアニメに出逢い、人の愛というものに関心を持った。
❝人の愛ってどんなもんなんだ?❞
ということで、定理繋がりで知り合った、真汐とお付き合いを始め、今は陽透というアバターの皮を被り、完璧な愛の最適解を実践中なのだ。
*
この日も真汐の部屋に泊まった陽透は、懐で可愛い寝息を立てている真汐の髪を、愛おしく撫でる。
時計に視線を向けると、時刻は7時ピッタリ。理想の覚醒時刻の完璧なタイミングで、今日も真汐の頬どころか顔中に、起きるまでキスの集中豪雨を降らせ、真汐を覚醒させる。
「おはよ、真汐。起きただろ?まだキス、足りない?」
「…ふみゅっ」
恥ずか死にますっ!
甘々な陽透の声に、真汐の脳内幸福度メーターのゲージは振り切れる。顔を真っ赤にして、酸欠の金魚のようにパクパクと、唇を震わせることで精いっぱいだった。
二人で起きて、朝食を準備する。陽透は真汐が好きなトロフワなオムレツを、毎回寸分変わらず完璧に形成する。
「陽透さんは、いつも上手です。満足のいくオムレツを、まだ作れません」
「言ってくれれば、私がいつでも作ってあげるよ。真汐の好みのデータは、全部頭の中にあるからね」
二人で作業をしているうしろで、炊飯器が頑張っている。
「あ、今日はトーストが食べたかった…ごはん、仕込んじゃった」
「トーストがいいですか?では、このご飯で夜は焼き飯にして、ラーメン炒飯定食にシフトスライドすればいいですよ」
爛々と輝く。もちろん晩御飯の献立に真汐の瞳が、である。
「いいの?じゃあ、リクエストしていい?」
「もちろん。真汐のリクエストは最重要事項。全て叶えてあげますよ」
「じゃあ今回のラーメンは、背脂ニンニクマシマシでっ!」
「分かりました。では炒飯は、ラーメンに合わせて栄養学的なものにしましょうね」
こうして毎回、真汐の栄養とカロリーを、常に計算してコントロールしつつ、真汐から溢れる欲望を欲望のままに叶える。
そんな真汐への愛と、HALSの論理が絶妙にズレた毎日を送っていた。

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