every single day
「なぁ藤倉くん」
「なぁに、澤くん?この呼び方懐かしーね」
「いやまぁそうかもだけどさ…あのね、俺が今何してたか分かる?」
「パスタ茹でてた。かわいい」
「そう、晩ご飯だよ。そんで何、いきなり」
聞き慣れ過ぎた語尾も突然の奇行にも俺はもう驚かない。驚きはしない、けれども。
「いやぁ、エプロンだなぁって思ったら、つい」
「別に初めてじゃないだろエプロン。というか身動き取れないんだけど?」
「あははっ」
「お前も茹でるぞ…」
背後から聞こえる無邪気な笑い声。見えなくたってどんな顔をしているのかもう嫌ってほど想像がつく。嫌じゃないけど。ちょっと癪だが、嫌になることはこれからも多分きっとまぁ絶対にないけど。
それはそうといい加減離してほしい。というか料理中に抱き着くなって、もう何度言ったことか。
危ないし邪魔だし身動き取れないし、しかも今回は後ろからだ。腕ごとまるっと抱き締められてしまって具材も混ぜられなければ食器も出せないし、俺はこいつの腹立つ顔すら見えず、その上頭の上に顎を乗せられる始末。このやろう。まだ笑ってるんだろうことは見なくても分かる。…見たいのに。
未だに埋まらない身長差を恨めしく思いつつ、そろそろ茹で上がる二人分のパスタを見て、肘で小突いてそろそろ離せと促す。するとわざとらしい大きめの溜め息を零してようやく俺の身体に巻き付いていた腕がほどけた。ちょっとだけ、熱が離れたところがひやっとして寂しい…気がしないこともない。
「まったく…焦げたらどうすんだ」
「それはごめん」
「怒る」
「ごめんて」
にやけきったままの顔で言われても。
そう思うも、別に焦げてなかったからまぁ良しとしよう。
こいつが作るものよりかはうまくはないかもしれないけれど、これでもちょっとは上達してる…はずだ。きっと。
「いつまでにやけてんだ。これ運んで」
「はぁーい」
まぁ上出来じゃないかな、と思って正面を見ると、美味しいかどうか聞くまでもない顔。
見慣れたはずなのにいつでも新鮮に俺の心を揺さぶる顔。…腹の立つ顔がある。
不味くないなら良かった。
本当に、花が飛んでるんじゃないかってくらい緩みきった顔しちゃってさ。
「まさおみくん」
「なに、いおりくん」
「続きはあとでね」
「………やっぱお前も茹でる」
「照れ隠しかわいー」
「あんまり茶化したら一日口利かない」
「すいませんでした」
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