第5話 神様の思し召し

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第5話 神様の思し召し

「今朝、Y県の山の中で男女5人の死体が見つかった事件で、警察は自殺と見て捜査を続けています。次のニュースです」  おかしいと思っていた彼の周りで起こる事件は、彼自身の死で終わるのだろう。  わたしは狡いだろうか?  最初は自分が巻き込まれそうになったことに恐怖を感じて彼と距離を置くことにした。  けれど、そうしているうちに、彼の周りでおかしな出来事が続けざまに起こっていることに気づいてしまった。  彼も不安だったに違いない。  寄り添ってあげるのが愛情だったのかもしれない。  そうしたら彼はまだ隣にいたかもしれない。  でも――わたしは生きていなかったかもしれない。  私は狡い。  愛する人を守ることより、生への執着を選んだ。  とにかく亡くなったのはひとり、2人、3人、4人、⋯⋯そして彼を含む5人。  わたしは生前の、まだ事が起こる前の彼の笑顔に向かって頭を下げ、お焼香をし、手を合わせた。  彼からのプロポーズを受けるはずだった左手の薬指をそっと見る。⋯⋯やさしい人だった。  都合よく、涙が頬を濡らした。  ◆◆◆◆◆ 「⋯⋯本日未明、S県にある〇〇老人ケアセンターで火災が発生しました。この火事に巻き込まれ亡くなった方は、利用者、職員を含めて6人。警察は放火の疑いも含めて慎重に捜査を進めています。では次のニュース⋯⋯」  ◆◆◆◆◆◆ (了)

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