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「嗚呼……めぐたん……」
ここは古本屋。しかもこの古本屋は二次元の少女ものが多くある店であり、そちらの趣味を持つ者たちには聖地とさえ呼ばれている。俺は同じ趣味嗜好を持つ友人と試し読みコーナーで『魔法少女☆めぐたん♪』を楽しんでいた。
「盟友、ページをめくるんだ。めぐたんにどんな展開が待ち構えているか待ち切れやしねぇ」
「分かっているさ。ライバルよ」
友人は俺のことを盟友と呼び、俺は友人のことをライバルと呼ぶ。互いにめぐたんを愛する良き仲間だ。このあとどうなるかなんて、今までもめぐたんシリーズをじっくり読んできたから予想はできる。その予想を裏切らない展開を俺たちは待ち構えているんだ。
「さぁ……めぐたん待ってろ……」
次のページを開こうとしたその瞬間、俺の手から『魔法少女☆めぐたん♪』が消えた。
「あんたら閉店の時間だよ」
俺の手にあった『魔法少女☆めぐたん♪』は、ここの看板娘『魔法少女☆めぐたん♪』似の店員に奪い取られてしまった。
「おやおや店員さん、後生だぜ。男の楽しみを奪うなんざいけないお嬢さんだな」
「あら? そのお嬢さんの前でいけないもの読むなんていけないのはどちらかしら?」
「ふっ。そのお嬢さんに構われたくて通っているというのにかい?」
「盟友、お嬢さんには、僕らの楽しみの高尚さなど分かるはずなかろう?」
「ええ。分からないわ。ただ、あんまりお痛が過ぎると出入り禁止にできるくらいの発言力はあるのよ?」
「仕方ないな……。ライバル、あとは家で楽しむとしよう。『魔法少女☆めぐたん♪』似の店員さんはご立腹みたいだ」
「まぁ、お嬢さんに負けてみるのも男だからな。『魔法少女☆めぐたん♪』似の店員さんに負けるなら、それもいい思い出だよな盟友」
それぞれ『魔法少女☆めぐたん♪』を一冊ずつ購入して俺らは外に出る。
「なぁライバル。今夜は月が綺麗だ。こんな日は、あの店員さんも魔法少女となって空をかけているかもな」
「それはまたロマンがあるな盟友。我らが魔法少年になるというロマンもまた捨てがたい」
そんな話をしている俺らの頭にいつの間にか後ろにいた『魔法少女☆めぐたん♪』似の店員さんが人差し指を突きつけた。
「無駄話はよしてね。あと女の子の秘密を捏造するのは、男らしくないわよ? 駐車場も閉めるんだから早く帰ってね」
「はは、そりゃ失礼した。退散するよ」
俺とライバルは、並んで店を離れた。
「ライバル、次の新刊もここで買おう」
「もちろんだ。『魔法少女☆めぐたん♪』似の店員さんに会えるのはここだけだからな。また閉店間際にな」
俺は拳と拳をぶつける。
今夜も綺麗に月が笑ってらぁ。

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