冬の公園

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 ◇  尾関のおばあちゃんが亡くなった。  八十九歳だったそうだ。  遺影の中で微笑むおばあちゃんの顔はとても晴れやかで、思わず涙があふれてくる。 「響子」  母に促されて、私は焼香を行った。  ──おばあちゃん。どうか安らかにお眠りください。  手を合わせながら、心の中でそう祈った。  私がおばあちゃんとの思い出で一番覚えているのは、小学四年生ごろ、十歳ぐらいのことだろう。  実家である一軒家の真向かいに、おばあちゃんは一人で暮らしていた。  親戚でもない、ただのご近所さん。でも私にとっては、実の祖母のように思えた存在。  尾関のおばあちゃんは、子どもが大きくなって家を出たあとは、夫婦二人暮らしを続けていたそうだが、旦那さんが亡くなってからは一人でその家に住んでいた。当時で七十歳ぐらい。  足腰も強くて、いろんなところへ一人で出かけるような若さがあった。 「わたしね、午前中はアルバイトしてるのよ」  うれしそうに家政婦のバイトの話をよくしてくれたことを思い出す。  いつもニコニコしていて、やさしいおばあちゃんのことが私は大好きだった。  学校が終わると、ランドセルを置いてすぐにおばあちゃんのもとを訪ねるのが日課になっていた。なにをするわけでもなく、縁側に座り、今日あったことを話す。  おまんじゅうを食べたり、スイカを切って出してくれたり。  その当時の私は、友だちと遊ぶよりも、おばあちゃんと一緒にいた時間のほうが長かったのかもしれない。それぐらい私は、尾関のおばあちゃんのことが好きだった。  私は一人っ子で、両親は共働き。母親も夕方までパートから帰ってこない。 「いつもすいません」  母は迎えに来るたびに頭を下げていたが、「一人で過ごすよりも、一緒にいるほうが楽しいでしょ?」とおばあちゃんは笑いながら言っていた。  ほらあ、と私は母の足元にからみながら勝ち誇ったような顔をする。それを見ておばあちゃんは嬉しそうに笑うのだ。  よく覚えているのが、夏がはじまる時期の夕方のこと。縁側でアイスを食べて、おばあちゃんと本を読んでいた。  吹き抜ける風が気持ちよくて、だんだんと眠気がせまってくる。おばあちゃんの腕にもたれかかるのが合図で、「響ちゃん、寝てもいいよ」と言ってくれる。  その言葉に甘えるように、私はおばあちゃんの膝の上で眠りに就く。

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