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最近変な夢を見続けている。
俺は細い通路に立っていて、両側の壁には内開きの扉がずらり。
その状態で歩き出すと、手前の扉から左右交互に一つずつ閉じていく。
通り過ぎた扉はもう決して開かず、俺自身も、戻ることはなくただ歩く。
そうやって歩いているうちに目が覚めるのだけれど、次の夢は、必ず前の途中から。
いったいこれは何の暗示なのだろう。
不可解で仕方がないが、相談するような相手もいない。
…今夜もまた、同じ夢の中を歩くことになった。でも一つだけ、今夜はいつもと違うことがあった。
扉はいつも、俺がそこの前に差しかかる瞬間に閉じるのだが、右側の扉が一向に閉じない。なので中を覗いてみたら、そこには、道に横たわる俺の姿があった。
側には一台の車と、俺を見つめる大勢の人達。その空間に救急車のものらしきサイレンが響いている。
ぎょっとなって反射的に扉を閉めたが、中の光景が何だったのか確かめたくなり、俺は扉のノブに手をかけた。でも、ノブは空回りするばかりで扉が開くことはなく、その内に目が覚めた。
いつもと違う夢の内容に戸惑いを覚え、そのことをひたすら考えながら会社に向かう。その道中で上がった大きなブレーキ音。
反射的に横へ逸れた俺の体のギリギリにまで迫った車。
停まった車から運転手が下りてきて、謝罪しながら俺の安否を気遣う。けれど俺は上の空で、ひたすら目の前の車を見つめていた。
夢で、道に横たわる俺の側に停まっていたのと同じ車だ。
しばらく呆然としていたが、なおも続く運転手の謝罪に我に返り、俺は何ともないことを告げ、安堵した様子の運転手を残してその場を去った。
だけど俺の意識からは、車のことが離れなかった。
見間違いじゃない。ナンバーの確認こそできなかったが、さっきの車は夢で見たものと同じだった。
夢の中では、あの車の側に俺は横たわっていた…。
ふと、ここ最近の夢が何であるのか判った気がした。
あれは俺の人生だ。そして無数の扉の中にるのは、ふいにやって来る人生の終わりの形だ。
通り過ぎた扉の中身は、それと知らず回避してきた危機。
昨夜、扉の中が見えたのは、あの死に方をしてもおかしくはない度合いが強かったから。
そうだ。さっき、咄嗟に身を翻さなかったら、俺は突っ込んできた車に轢かれていた。
あの瞬間的判断は、夢の中で俺が扉を閉め宝の者だろうか。
さすがにそこまでは判らないけれど、あの夢は、人生は、いつどこでどんな死に方をしてもおかしくはない、という暗示なのだろう。
そして、ほんの些細な対応の差で、扉の中身は夢から現実になる。
それを胸に刻んで、常に注意深く生きていけということなんだろうな。
そんな結論を出した日から、俺は扉の夢を見ることはなくなった。
だから、予め、今日は何かが起こりそうだと厳重警戒することはできないけれど、常に周りに気を配っていれば、ある程度までの危険は回避できる。
あの日それを身をもって知ったから、この先も気を抜くことなく生きて、おそらくはあの通路の行き当たりにあるだろう、『天寿を全うする扉』だけを目指そう。
夢の扉…完

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