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今通り過ぎた車、もうじき事故に遭う。そして運転手は助からない。だって、車の影が見えなかったから。
物心がついた時には、俺はもう『影のないもの』が見えていた。
さすがに、それが人の死に関係してると判ったのは、もっと大きくなってからだけれど、おかしなことを言う子供だと周りにささやかれ、早い段階で、自分が『そう見えてしまう』とは隠すようになった。
だけど見える。成人した今でも『影のないもの』は判ってしまう。
そんな俺の足元には、この世に存在しているもの総てにあるべき『影』がない。
つまり俺は、自分が見てきたとおりなら、気づいた時には死んでいたってことなんだが、おかしなことに、呼吸も鼓動も体温も全部ある。飯食ったりトイレに行ったり普通にするし、髪や爪もちゃんと伸びる。痛がったり熱い寒いを感じる感覚もちゃんとある。
なのに影だけがない。
法則的には、『もうじき存在しなくなるもの』から失われる影。
なのに、それがないままこうしてここにいる俺は何なのか。
いつかこの答えは判るのだろうか。
考えていても仕方がないので、まあ普通に暮らしている。
無影…完

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