3人が本棚に入れています
本棚に追加
枯井戸神社
日は沈み、山の端はぼんやりと光を帯びている。まるで昼と夜が混ざり合っているような混沌とした空。
朝、下駄箱に一通の手紙が入っていた。放課後、枯井戸神社で待っていると書かれていた。
枯井戸神社。その昔、日照りが続き村中の井戸が枯れてしまい、たくさんの被害者が出た。そんな苦しい思いをして亡くなった霊魂を鎮めるために建てられた神社だといわれている。
町外れの神社は参拝する人もなく、静まりかえっていた。鳥居をくぐった瞬間、ひんやりとした空気が体を包んだ。
来なければ良かった
後悔が一気に膨らんだ。しかし手紙の主は合唱部の部長である舞子先輩。日本人形みたいな真っ黒で長い髪。切り揃えられた前髪からのぞく冷たい目。合唱中、何故か僕を無表情で見つめている。責められているような、呆れられているような、そんな気にさせられる。あの目を思い出しただけで身震いがする。
僕に何の用があるのだろうか。下手くそだから部活を辞めろといいたいのだろうか。でも僕より下手な奴はたくさんいる。ふざけて合唱を中断させる奴だっている。そりゃあ僕は上手とは言い難い。でも真面目に必死で練習している。それなのに何で僕なんだ? そんなのおかしいじゃないか。
少し憤りつつ、参道を進む。
ジャリッ
突然の物音に足が止まる。石畳の上を歩いていたつもりが、いつの間にか砂利を踏んでいた。神社の中は木が茂り、足元も見えないほど暗い。自分の足音に驚くなんて。
帰ろう。そう思い拝殿に背を向けた時だった。
……ジャリ
拝殿の方から音がした。恐る恐る振り返る。そこには黒い影がいた。逃げようと思ったが恐怖で足がすくむ。やはり夜の神社には来てはいけなかったのだ。夜は陰の気が高まり、ここに祀られた亡者たちが湧いて出てくるという。このままじゃ亡者に取り憑かれてしまう。ああ、喉が渇いてきた。既に取り憑かれてしまったのだろうか。

最初のコメントを投稿しよう!