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「まあ車を買った時の書類に、自宅や勤務先を書いているから家を知っていても当然だな。しかし女性は今までも何回かあなたの家に上がったことがあるといっていましたよ」
「はぁぁぁあ!?」
怒りは爆発寸前だ。
「自分を家に上げるくらいだから、近いうちに奥さんと離婚して結婚してくれるものだと思っていたそうだ」
「ぬぁあにぃぃぃい!?」
奈々は机をバンッと叩いて立ち上がった。椅子が勢いよく後ろに倒れた。
「でも、旦那さんは離婚する気はさらさらなかった。それどころか、そろそろ終わりにしようと別れを切り出されていた。腹を立てた女性は、取り引き先の板金工場に行って青酸カリを盗んできた。それをお昼ご飯に混ぜ、旦那さんに飲ませたと白状しました」
奈々の頭の中は真っ白になった。色々な感情が一気に沸騰し、湯気になって消えた。その瞬間奈々は骨を抜かれたクラゲのようにように、床に倒れた。
「奥さん、奥さん!」
刑事は慌てて奈々に駆け寄り、上体を抱き上げた。
「大丈夫ですか?」
「……私帰れるんですね。主人のお葬式、してあげられるんですね」
「ええ。立派なお葬式をしてあげてください」
「はい」
奈々はほっとしたのか、刑事の腕に体重を預けた。何にほっとしたのかは奈々にも分からなかった。取り敢えず保険金は入りそうだ。だったら寂しさを吹き飛ばすくらいに面白おかしく暮らせばいい。そう思うとすぐにでも家に帰りたかった。
「ああ、その前に。何故青酸カリを買ったのか、話を聞かせてくださいね」

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