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第一話:悪役令嬢は廃業しますわ
「これより、アリシア・フォン・ディンツィアの処刑を執行する!」
冬の朝の空気は、突き刺さるように冷たかった。
王都中央広場。そこを取り囲む群衆の怒号は、地鳴りのように私の鼓膜を震わせる。
「死ね! 稀代の悪女め!」
「聖女様を苦しめた罰だ!」
飛んでくる罵声、投げつけられる石、腐った野菜。
かつて私を「王国の至宝」と称えた喉が、今は私を呪うために枯らされている。実に滑稽な光景だった。
ギロチンの刃が、朝日に反射して白銀に光る。
私は、護送兵に促されるまま、ゆっくりと断頭台の階段を上った。足取りは軽い。震えなど微塵もない。
(長かった……ようやく、この時が来たわ)
ドレスの裾を汚すこともなく、私は優雅に跪いた。
この日のために、私は一年の歳月を捧げてきたのだ。

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