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本棚に追加 五月十九日の午前十時、大学時代からの友人、大島柑奈と今井麻衣がお揃いのような喪服姿で斎場に現れた。
「この度はご愁傷で……」
受付を済ませた二人の表情には、悲しみと無念が滲んでいた。
「麻衣」
柑奈が麻衣の背中をさする。
「まさか、こんなことになるなんて」
柑奈は白いハンカチで涙を拭った。
「秋生が早く目を覚ましてくれていたら――ごめん」
「ううん」
思いやりがあり協調性のある柑奈と奔放だが素直な性格の麻衣とは気が合い、大学を卒業してからも定期的に会っていた。そして、宮野秋生もまた同じく大学時代に知り合い、仲の良い友人だった。
「秋生が目が覚めたら、どんな状態でも側にいるつもりよ」
「麻衣、あまり思い詰めないで。私もいるから」
柑奈が慰めるように麻衣の肩に手を置いた。
「ありがとう」
麻衣がそっとその手を離した。
「でも、柑奈はもう忘れて」
「え?」
「許せない気持ちで苦しいのは私だけでいい――ううん。ご両親はもっと強く咲希を憎んでるんだわ」
二人の視線の先には、秋生の両親がいた。私の遺影を睨むような秋生の父親と激情を隠さない母親が、乱暴な手つきで焼香を済ませた。私の両親、親族に対して礼節を欠いたのは、恨みの強さの表れなのかもしれない。
「あんたが死んだって言ったら、秋生は目覚めるかもしれない」
秋生の父親がボソボソとお悔やみの言葉を発したのに対し、母親の方は小声ではあったが周りの人間には何と呟いたか分かっただろう。
「………お忙しい中、ご参列いただき痛み入ります」
母が声を振るわせながらそう言い、父が深々と頭を下げたのを、私はなす術なく見つめるしかなかった。こんなにそばにいるのに、記憶の残骸みたいな今の私にはどうすることも出来ない。母は彼らが離れた途端、悔しそうに静かに涙を流していた。遺影の私は、照れたように微笑んでいる。

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