第三章 レンズ越しの答え合わせ

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「えーと……最初は、俺が配ったチラシを受け取ってすぐに担当として指名してくれた時です」 「じゃあ、出会った日に?」 「……です。カットしながらの会話で、誠実で気取らない態度が、なんかこう、すげぇ良いなって思って。葉鳥さんって、言葉数は少ないけど相手を不快にさせないように返す一言を選んでるでしょ。そういうとこが俺の感性にビンビン響いて、男同士だからとか、何の障害にも思えないくらい、すぐに惹かれてました」  勢い任せの失言に気づいた甲斐と、突然の告白により情緒が大爆発して「ぼ、僕も好き」と思わず漏らしてしまった葉鳥。食事どころではなくなった二人はそそくさとレストランを出て、夜道を歩きながら会話を重ねている。 「あとですね。当たり前だけど、カットしてる時は眼鏡を外してるでしょう。で、セットまで終わったら合わせ鏡で全体確認するために眼鏡をかけるじゃないですか。実は、その瞬間の葉鳥さんを見るのが俺の密かな楽しみなんです。俺、眼鏡をかけてる葉鳥さんの横顔が一番好き」  あなたに恋した瞬間のことを話してもいいですか、との言葉で始まった甲斐の思い出話は、恋を自覚したばかりの三十三歳の地味なおじさんの心をこれでもかと鷲掴みしてくるものだから、動揺とキュンが激しい。

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