深海魚たち

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 ニゲラの里ケアホームという看板が見え、俺は駐車場に軽ワゴンを停めた。コンパクトカーを横付けして停めた竣が、のそりと降りて来た。 「ニゲラって、花の名前なんですね」  竣が持っていたタブレットで、ニゲラのウェブサイトを開いた。青い剣先のような花びら――実は萼片――がシンボルマークらしい。 「花言葉は未来、深い愛――意味深っすね」 「深く考えるな」  俺達は施設のエントランスに向かった。 「ご苦労様でした」  グレーのスーツに身を包んだ蒔田が出迎えた。年齢不詳だ。 「俺達はもう一つ大事な仕事が」 「そうですね。倉本竣さん」  突然、名指しされた竣がギクリとした。 「は、はい」 「倉本さんには、剣崎運送さんの立ち会いをしてもらいます」 「えっ、それってまさか」 「大事な荷物ですから。倉本さんが断ればりえさんに、立ち会いを頼むことになりますよ」  そう言って冷酷な微笑みを浮かべると、りえは吐き気をもようしたのか口元を覆った。 「分かりました」 「では剣崎運送さん、仕事が終わり次第、倉本さんをこちらに送っていただけます?」  竣が逃亡を図らないようにするためだろう。 「分かりました。では、のちほど」  震える竣を無理矢理軽ワゴンに乗せ、山奥へ入って行く。 「ペナルティ、あったな」 「やっぱり、怖い人っすね」  一時間ほどニゲラ所有の山奥へ進み、幹に目印代わりの青いテープが貼られた場所を見つけた。ここに埋めよということだ。ライトを設置し、作業開始だ。スコップで土を掘り進める。一人の人間を完全に埋めるのは相当きつい作業だが、今回は少し違う。 「掘り出しやすいように、深く掘り過ぎるなってよ」 「掘り返すんすか」 「自首させるらしいからな」 「完全犯罪狙わないっすか」 「男の家柄がな――親族と交渉するためだそうだ」 「時間稼ぎってことっすか」 「あのままアパートに放置出来ないからな」

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