6人が本棚に入れています
本棚に追加 ニゲラの里ケアホームという看板が見え、俺は駐車場に軽ワゴンを停めた。コンパクトカーを横付けして停めた竣が、のそりと降りて来た。
「ニゲラって、花の名前なんですね」
竣が持っていたタブレットで、ニゲラのウェブサイトを開いた。青い剣先のような花びら――実は萼片――がシンボルマークらしい。
「花言葉は未来、深い愛――意味深っすね」
「深く考えるな」
俺達は施設のエントランスに向かった。
「ご苦労様でした」
グレーのスーツに身を包んだ蒔田が出迎えた。年齢不詳だ。
「俺達はもう一つ大事な仕事が」
「そうですね。倉本竣さん」
突然、名指しされた竣がギクリとした。
「は、はい」
「倉本さんには、剣崎運送さんの立ち会いをしてもらいます」
「えっ、それってまさか」
「大事な荷物ですから。倉本さんが断ればりえさんに、立ち会いを頼むことになりますよ」
そう言って冷酷な微笑みを浮かべると、りえは吐き気をもようしたのか口元を覆った。
「分かりました」
「では剣崎運送さん、仕事が終わり次第、倉本さんをこちらに送っていただけます?」
竣が逃亡を図らないようにするためだろう。
「分かりました。では、のちほど」
震える竣を無理矢理軽ワゴンに乗せ、山奥へ入って行く。
「ペナルティ、あったな」
「やっぱり、怖い人っすね」
一時間ほどニゲラ所有の山奥へ進み、幹に目印代わりの青いテープが貼られた場所を見つけた。ここに埋めよということだ。ライトを設置し、作業開始だ。スコップで土を掘り進める。一人の人間を完全に埋めるのは相当きつい作業だが、今回は少し違う。
「掘り出しやすいように、深く掘り過ぎるなってよ」
「掘り返すんすか」
「自首させるらしいからな」
「完全犯罪狙わないっすか」
「男の家柄がな――親族と交渉するためだそうだ」
「時間稼ぎってことっすか」
「あのままアパートに放置出来ないからな」

最初のコメントを投稿しよう!