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本棚に追加第1話 合コンにて
「あー……これは、失敗したかもしれん」
居酒屋の喧騒の中、幹事の佐藤亮はジョッキを傾けながら頭を抱えた。
今日の合コンは、数合わせと顔面偏差値の底上げのために、大学でも指折りの「モテ男」二人を呼んでしまったのだ。
一人は紺野廉。黒髪がさらりと額にかかり、切れ長の瞳。黙っていれば彫刻のようにクールだが、その実、中身は下ネタ好きのゲラだ。佐藤とは大学からの付き合いで、同じ経済学部に通う。
もう一人は藤原遥斗。ハイライトが入ったセミロングの茶髪に、どこか儚げな美貌。髪を耳にかける仕草が妙に色っぽくて、隣の女子に「髪、きれいですね」と声をかけられていた。初対面では人見知りを発動するが、気を許すと廉同様に笑いの沸点が崩壊する。佐藤とは中学から一緒で、学部こそ違うが同じ大学に進学した。
廉は面倒くさがり屋で、合コンに来たのも佐藤の強引な誘いに負けただけだ。女子たちの視線を集めてはいるが、スマホをいじりながら適当に相槌を打っていた。
一方、廉の向かいの席に座っている遥斗は、少し緊張した様子で周りを見回していた。初めましてから始まる場面が苦手で、こんな場は本当は避けたい。でも佐藤の「同世代の友達増やせよ!」という言葉に負けて参加した。美人にも可愛くも見える顔立ちが、女子からの視線を集めている。
佐藤は、廉と遥斗という、この種類の異なるイケメンが、交わることはないと思っていた。お互い「ふーん、イケメンだね」程度で終わるだろうと。
廉が連れている女の子はいつも可愛らしい雰囲気の小柄な子だし、遥斗は年上の包容力のある相手に寄生しがちということも知っていた。
系統の違うイケメン二人、恋愛の方向性もまるで違う。でも今日のメインディッシュとして女子たちの視線を独占するはずの二人だ。挨拶くらいさせておこうと気を配る。
廉は、向かいの席に座っていた遥斗の存在なんて気にも留めていなかった。でも、佐藤が「廉、遥斗も同じ大学だぞ。話してみろよ」と振ってきた瞬間、二人の目が合った。
「……あ、俺、藤原遥斗。よろしく」
遥斗の声は少し低めで、緊張しているのが丸わかりだった。つっかえながら言うのを聞いて、廉はくすりと笑った。
「紺野廉。……なんか、顔が綺麗だな、お前。女の子みたい」
ストレートな褒め言葉に、遥斗が一瞬目を丸くする。それから、くすっと笑った。
「なんだよ、それ」
佐藤が慌ててフォローした。
「おい廉、初対面でそれかよ。遥斗は俺の中学からの腐れ縁で、意外と面白い奴だぞ。遥斗、廉は俺と同じ経済学部だよ。クールぶってるけど、下ネタ振ったら止まらなくなるからな」
その言葉をきっかけに、話題が下ネタに飛び火した。廉の振る下ネタに、遥斗が意外なほど乗っかってきて、二人して爆笑し始めた。周りの女子たちが「え、何話してるの?」と興味津々で寄ってくるのを、佐藤が慌てて引き留めていた。
合コンが進むにつれ、廉と遥斗は隣同士に移動し、女の子たちそっちのけでビールを酌み交わした。テーブルの端、完全に二人だけの世界が出来上がっていた。
モテる、そして遊び人、という共通点が二人を近づけた。遥斗は普段初対面が苦手なのに、廉のクールな顔の下に隠れた笑い上戸の部分が面白くて、つい爆笑が止まらなくなった。廉も、遥斗の儚げな外見とギャップのある明るさが面白く、珍しく自分から話を振り続けた。
「あの二人、なんかお似合いすぎない……?」
「うん、入る隙ないね……」
参加者の女子たちが苦笑いしている。佐藤は心の中で(合わなさそうと思ってたのに、めっちゃ話してるじゃん。でも男たちにとってはライバルが減ってラッキーだったわ)と手を合わせていた。

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