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近所の家に、庭にたくさん棒を立て、その総てに空のペットボトルを差している家がある。
俺は直接そこの家の人と話したことはないけれど、母親が言うには、そこの人は大の動物嫌いで、鳥や猫が近づかないようにそうしているとのことだった。
ああいうのって効果があるのかな。まあ、何の害がある訳じゃないから、本人が自宅でやっていることに口出しは無用だな。
そう考え、あまり気にしないようにしていたが、今日は気になって仕方がない。
だって、ちょうど通りかかったら、庭中のペットボトルが揺れ始めたんだ。
鳥や猫といった生き物の類は一切いない。風すら吹いていない。なのにどうしてペットボトルが揺れるんだ?
不思議な気持ちで立ち尽くしていたら、そこの家の中から声が響いた。
「おい、そこの! 突っ立ってないで早く行け! こっちは気にするな! 意識を向けるな! 早く行け!」
怒鳴るような声に急かされるままその場を離れ、その勢いで俺は自宅に駆け込んだ。
荒くなった呼吸を整えながらさっきの光景を思い浮かべる。その時に、駆け出す寸前、チラと、庭に何かの影がいたことを思い出した。
あれは何だったのだろう…いや、ダメだ。考えちゃいけない。
本能が『さっきの何か』のことを考えることを止めろと告げる。
思い出すな。あれは関わってはいけないものだ。そしてあの家には、そんなものが出現する。だからあそこの人は、動物避けと称してペットボトルを立て、あの何かの出現を察知できるよう備えているのだろう。
…その日以降も、あの家の側を通ることは何度となくあるけれど、もう俺は、決して庭を見ないようにしている。
またペットボトルが揺れ始めた時、今度こそ、あの何かをはっきり見てしまうかもしれない。そしてきっと、そうなったら俺の人生はそこで終わる。
だからその危険に関わらないよう、俺は、ペットボトルで覆われたあの家の側を、いつも足早に通り過ぎる。
動物避け…完

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