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本棚に追加くちづけ
彼と会うと周囲の人達が振り返る。
彼が女性にモテるのは、今に始まったことじゃない。
(学生の頃からずっとそう)
流石に今は、大人になったし?
あたしに直接何か嫌なことを言ってきたり、
嫌がらせをする子はいなくなったけれど。
――人が変わったように今の彼は、あたしに甘い。
表参道で美容師をしている彼と。
地元で静養しながら、親戚の仕事を手伝うあたし。
プチ遠距離恋愛だ。
「…んッ…」
車に乗って助手席に座った途端に重ねられる唇。
待ち遠しくてたまらなかったのが伝わる指先。
キスを楽しんだ後、コツンとおでこを寄せて彼が呟く。
「会いたくて来ちゃった…。仕事の後にごめんね、疲れてない?」
「…うん。大丈夫」
彼と会ったら疲れも吹き飛ぶ。
少し前の彼は、あたしを突き放してツンツンしていたのに…。
今は周囲の人曰く、野良猫がとうとう家猫になったねと笑う。
そのギャップに視線を集めてしまうようだ。
もう自分の気持ちを偽らなくていい。
素直に言ってよくなった彼は、たがが外れて、
あたしを甘やかすように求めてくれる。
「君にはいっぱい悲しい思いをさせちゃったからね」
そう言って髪を撫でてくれたり、抱きしめてくれる。
悲しい思いをしたのは、彼も同じだ。
だからあたしも彼に応える。
すごく幸せなのに… あたしは、我儘だ。
もっと一緒にいたくなっている。

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