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本棚に追加01.古い言い伝え
大学生の諒にはひそかに片想いしている女の子がいる。同じ大学に通う女子学生の六花だ。
彼女は人目を引く整った顔立ちをしていて、透き通るような肌をしている。それでいて、髪型も化粧も服装も決めすぎていないところが人を惹きつける。周囲の友達との会話に明るくほがらかに笑い、笑顔を惜しみなく振りまく。
そんな六花は男子学生はもちろん、女子学生にも人気がある。諒が惹きつけられるのも無理はなかった。彼女がどんなに高嶺の花であっても。言葉さえも交わしたことはなくても。
六花からしてみれば、自分のことなど視界に入っていないことも諒にはよくわかる。いや、自分の存在など認識もしていないだろう。なぜならば、自分の顔がひどく醜いから。簡単に言えば、ものすごくブサイクだからだ。
それでも諒は六花の近くにいて、六花とその友達の亜美が交わす会話を耳に挟むのが毎日の楽しみとなっていた。
六花の顔を見て、その声を聞くのが大学での唯一の楽しみだと言ってもいいだろう。自分でもキモいとは思うけれど、そうすることしかできないから。
そんなある日の午後、いつもどおりに六花が亜美となにやら熱心に話しているのが諒の耳に聞こえてきた。
「ねえ、知ってる? 『スーパー・シルバー・ムーン』の話」
六花の声に諒は思わず耳を澄ませた。亜美が興味深そうに「それって何?」と聞き返す。
「ヨーロッパの古い言い伝えがあるの、スーパー・シルバー・ムーンって。ぜんぜんくもりのない鏡のように銀色に輝く満月のことで、人間が一生に一度出会うか出会わないかの確率で現れるって」

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