遙か1 友雅×天真

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 「あ~、こうも雨ばっかだと退屈だな」  天真は一人、木刀を片手に溜息を吐いていた。    ここ数日ずっと雨が降り続いており外での鍛練ができずに邸の中をウロウロといったりきたりを繰り返していた。  今日も今日とて朝から鍛練をするつもりが目覚めてみればしとしとと音もなく降っていた。嫌な予感的中と言ったところか。  天真はゆっくりと立ち上がり藤姫の元へと赴くも今日は他の八葉が各々のお役目なり予定なりが重なりいるのは天真と詩紋、そしてあかねの現代組だけであった。  それに付け加えるてあかねは物忌みだと言う。  八葉も集まらず神子もこうだとやる事など到底見つからずに、藤姫の心遣いもあり今日一日はゆっくりと過ごす事に決めたのは午前中の話だ。  ただのんびりと畳に寝転がりながら無駄とも言える時間を過ごしていたのはいいが、午後になりやはりやる事が無さ過ぎて暇を持て余した天真は徐々に苛立ちを感じ始める己と布が肌にじめじめとくっつく嫌な感じに溜息を吐いてそれを取っ払うように着物を無造作にくしゃくしゃと上下左右に揺すった。    「こんだけ湿気がありゃ外に行くのも同じだな」  天真は一人ゴチて木刀を手に外へ出ようとした所へ聞き慣れた声が掛かった。  「おや?こんな雨の中に鍛練とは天真も随分と物好きだね」  「友雅か。何の用だよ」  天真は聞き慣れすぎた声の主の名を確かめることもなく呼ぶと、あからさまに不機嫌さを露にする。  「つれない恋人だね君は。私の訪れを喜んではくれていないと見えるが?」  「あぁ、お察しの通り喜んでないからな。お前といたらろくな目に合わないんだよ」  「ろくな目とは本当につれない姫君だ」 友雅は、天真との距離を一瞬で縮めてそのまま顎を掬い唇を重ねた。      「どうせ濡れるならばいっそ私の部屋で…ね?」     友雅は天真の肩に手を回し耳元に艶を含む美声を惜し気もなく注ぎ込んだ。
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