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源氏が長、源頼朝が平家打倒の味方にと選んだのは熊野水軍。
ならば別当に逢いに行くには早い方がいいと言って京を離れたのはもう幾日も前の事。
太陽に照らされて眩しく光り輝く初夏独特の緑豊かな山を越え峠を越え。時折近くを流れる川で涼を取りつつ漸くの思いで着いた矢先で、彼らはある人物と出会った。
『ヒノエ、女性を見つけると後先考えずに口説くのはやめたらどうですか?』
まるで風の様に突然現れたこの赤髪の少年を知った風に言ってのける自分に驚かなかったのは神子と敦盛。譲と九郎は特に驚いたらしく眼を数回パチパチと瞬かせていた。
そんな反応がいつも似通っている二人に僅かに苦笑するとまるで面白くもないと言わんばかりにそれを見ていたヒノエがひねくれたような言葉を返す。
『あんたもいたんだ』
その言葉にまたしても弁慶は苦笑いを見せた。
ヒノエは何だかバツが悪くなって話題を変える。
その額には宝珠があり彼も八葉なのだと弁慶は一人、目を閉じる。
彼が一人悶々と考えている間にちゃっかり神子と再び逢うと誓い合った彼は木へと飛び乗りその場を後にした一。
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