煎茶①

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煎茶①

私は、2時間程前に、傷付いた心のまま、あてもなく 京都行きの新幹線に飛び乗った。 向かうのは、かつて小学校から高校まで過ごした『第2の故郷』 父の転勤で6歳の時からこの地に住んでいた。 しかし、2年前に父の本社復帰に伴い、両親も完全に地元の横浜に居を移してしまった。 だから、大学進学を機に東京に出てきた私は、関西に足を向ける機会を完全に無くしていた。 京都タワーが一瞬だけ車窓から見えた。 『帰ってきたんだ………』 新幹線のアナウンスが京都に着いた事を知らせる。 スーツケースを転がし、ホームに立つと……私は、深く息を吸い込んだ。 18歳の春に、このホームから上りの新幹線に乗った。 あれから――ちょうど7年の月日が流れていた。 私の『アオハル』をほとんど過ごした京都。 初めて恋をしたのもココ、 失恋したのもココ、 東京に出てからは京都の事は思い出さない様にしてきた。 同窓会の通知も、成人式の時でさえ、理由を付けて背を向けてきた。 そういえば、成人式の日は、サークルの先輩の家で飲み会をしていたっけ…。 京都駅から近鉄電車に乗り、丹波橋で京阪に乗り換える。中書島でさらに乗り換え、懐かしい、けれど7年前より少し垢抜けた景色を振り返り眺めながら…… 私は宇治駅に降り立った。 目の前には宇治川。 そこに架かる宇治橋。 橋を渡れば、途中に塔の島の中洲が見える。 美味しい茶団子の駿河屋さんも...まだあった。 「あ~、懐かしいなぁ……」 思わず、京言葉のイントネーションが口をつく。 東京に出てからは封印していた『京言葉』。 6歳まで東京に居た私にとって、標準語に戻るのは容易な事だった。 むしろ、こちらに初めて移ってきた時は……標準語で話すと近所の子に虐められた。 その反動で必死に覚えたのが……この京言葉だ。 『せやから、すぐに京言葉で話すようになったんやったなぁ~』 思い出すと、何だか懐かしさが込み上げた。 宇治橋を渡りきり、対岸通りに渡るための信号は赤。 ……信号が変わるのをじっと待っていると―――。 『えっ、まさか…………』 反対側に立っていたのは、高校卒業と同時に別れた…… 『蓮人』だった。

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