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桜が咲いていた期間は、ほんの一瞬だった。
新幹線で西へ降り、地元の駅のホームに足をついた瞬間、アスファルトを熱する温度が明らかに違うことに気付く。
私は現在、関東にある遠方の大学に通っている。大学生になって二年目。
ゴールデンウィークの帰省ラッシュや、高騰するチケット代を避けるために、帰省の時期は毎年少しだけ後ろへずらすのが恒例になっていた。
都会にいる間はあまり意識しないけれど、地元に降り立つたび、ああ、夏が来たんだなと肌で感じる。
青々と輝く若葉の隙間を縫う、爽やかな薫風。陽を蓄えたアスファルトの乾いた匂い。すでに夏服に切り替わった高校生たちの、ほんのり日焼けした肌。そんな光景のすべてが、季節の変わり目を告げていた。
夏は、楽しいことがたくさんある。川遊びにキャンプ、夏祭り、花火、海開きに、その他諸々…。
だけど、私は夏が苦手だ。初夏の気配を察するたびに、これからやってくる盛夏を思って少しだけ億劫になる。
じんじんと照りつける太陽の日差しも、逃げ場のない体温の上昇も、羽音を立てる虫たちも…、何より、周りが全体的に活動的になって、誰もが生き生きと動き出すあの眩しさが、自分にはどうしても合わない気がしてしまう。
だけど、実家の縁側で食べるソーダ味のアイスだけは、嫌いじゃなかった。パキッと半分に割って分け合う、あの子との時間。
「こは! アイス食べよう!」
毎年、この時期に帰省すると、決まってあの子がやってくる。
西日に透ける新緑の中、学校帰りの制服姿で、まだ幼さの残る笑顔を輝かせながら、毎年夏には必ず─────。

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