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「いらっしゃいませー! 今日はなにかお探しですか?」
「あー、ちょっとパソコンを新しくしようかと」
「パソコンですね! PCコーナーはあちらなのでご案内しますよ!」
「あ、はい。どうも」
自動ドアをくぐって数歩進んだところで爛々とした目をした店員が近づいてきた。その勢いに押されて私は一歩後ずさる。
電器屋はいろんなものが置いてあってワクワクする場所なのだが、店員の接客意欲だけは少し苦手だ。
「買い替えをご検討ですか?」
「まあ、はい。ちょっと電池持ちが悪くなってきたので下見に」
「最新のは薄くて軽いしバッテリーもかなり良くなってますからねー。ぜひじっくり見ていってください!」
入り組んだ通路をするすると進みながら話す店員に私はついていく。様々な音楽が流れている音響コーナーの真ん中でも彼の声はよく通った。振り返ったときに見えた名札には「淀橋」と書かれている。
音響コーナーを抜けると、店内の中央を贅沢に使った広いスペースがあった。天井から吊り下げられた看板には『注目の新商品!』と書かれている。
なにげなくその棚を眺めて、私は思わず足を止めた。
「この先がPCコーナーですよ」
「え、あれなに」
「ん? ああ、あれですか。最近入荷した商品ですね」
私の疑問に淀橋が答えている間も『注目の新商品!』コーナーから目が離せなかった。
その場で立ち尽くす私を置いて、淀橋は躊躇なくそれに近づいていく。
「電子機鬼です」
光沢のある金属で作られた厳つい表情の鬼の頭がそこにはあった。
両腕でも抱えきれなさそうなサイズの鬼の頭は今にも喋りだしそうなほどリアルに作られていて、シンプルな見た目の空気清浄機が並ぶ中で異質なオーラを纏っている。
「……いや、えっと?」
「簡単に言えば鬼型の多機能家電ですね。これひとつに様々な機能が組み込まれてまして。たとえば鼻から汚い空気を吸って口から綺麗な空気を出してくれますし、両目は光るのでサブ照明としてお部屋の雰囲気を底上げしてくれます」
「空気も雰囲気も悪くなる気しかしないんだけど」
牙も角も眼もギラギラしていて、深い皺の刻まれた怒りの表情を見ているとなんだか責められている気分になってくる。
こんなの家に置いてたら友達もすぐ帰りそうだ。誰が買うんだこんなもん。
「一台でいろいろできるんでけっこう便利なんですけどねえ」
「そうかもですけど、なんで鬼の頭型にしたんでしょうね」
「それはこの商品だけの特別な機能があるからですよ」
「特別な機能?」
淀橋は簡潔に説明する。私はへえと頷く。
頷きながら、私はもう一度同じことを思った。
誰が買うんだこんなもん。

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