俺の家はかなりの田舎にあり、周囲は畑と田んぼだらけ。
その中の一つに、真ん中に大きな石がある畑があった。
作物はその石を避けるように作られていて、どう見ても邪魔なのに、持ち主の老夫婦は石を取り除こうとはしなかった。
高校の時までは、それを見ながら通学していたけれど、大学進学で俺は地元を離れることになった。
そこからは学業とバイト漬けの生活が始まり、家に帰ることがなかった。
それでも今年は、どうにか時間を作って帰省したのだが、帰った故郷は数年でかなりさびれていた。
うちの実家は雑貨店を経営していて、農業は行っていないのだけれど、近所の農家の人達が、この二、三年、作物がろくに育たないと愚痴を言っているらしい。
実際、俺も駅から家に向かう途中で田畑を見たけれど、色々作物が植えられているのに、それらは上手く育っている様子ではなかった。
そんな中、ふと気づいたのが、ずっと見てきた大きな石が、畑からなくなっているということだった。
親に聞いたら、畑の持ち主の老夫婦が亡くなり、畑はどこかの業者に買い取られ、都会の人達の農業体験用になったとか。
その際、石は邪魔だからと掘り出されて撤去されたということだった。
まあ確かに、見るからに邪魔そうな石だったからな。
そんなことを考えながら、久々の故郷を散歩して回ったのだが、その時、あの畑に佇む人影に気づいた。
農業体験の人? それとも畑を所有している会社の人? どちらにしても、畑仕事をするいでたちではないような…。
なんとなく視線を向けていたら、その人物が畑の中をうろつき始めた。
作物が生えているところを歩き回ったりしたら、せっかく植えた物がダメになってしまう。
そう思い、声をかけようとした時に、人影の姿が透けていることに気づいた。
一見人間に見える透けた姿の何かが、畑の作物の上をうろつき回る。すると、潰れこそしないものの、作物は急速に弱っていく…俺にはその様子がそう見えた。
俺になど気づく様子もなく、透けた何かは畑をうろつき、ついには他の田畑も歩き回って、やがて元の畑に戻り、とある一点で消えた。
間違いなく、かつてあの石が存在していた場所。
畑の元の持ち主だった老夫婦は、あの石をどかしたらこうなることを知っていたのかもしれない。けれどそれを誰かに伝える前に亡くなった。
あるいは、伝えていたのに無視され、邪魔という理由で石は撤去されてしまった。
真相は判らないけれど、石がなくなったのは事実で、あの何かが解き放たれてしまったのも事実。
多分俺の故郷のこの土地は、いずれ、誰も農作業などできない場所となるだろう。そして皆、ここを捨ててどこかへ移り、ゆっくりと滅んでいくのだろう。
石が封じていた何か。この場所が、それだけが好きにうろつく荒れ地になる日も遠くないのかもしれない。
畑の石…完
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