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本棚に追加「辞める。もうみっともないサッカーはできない」
「みっともなくても格好良いよ」
鬼姫も自分のこともあるので戦友の体力不足のことは擁護しなかった。
「私はみっともないのは苦手なんだ。今なら過去の栄光を持って引退できる。だけど、鬼姫ちゃんは違うよね?」
「あたし?」
少し怪訝な顔で鬼姫は戦友を見た。
「それこそ鬼のようにボールだけを見てる。泥だらけになりながら、息を切らしても、若手に追い付かれても、どこまでもサッカーを楽しんで、好いている。だから、これからも続けなさいよ」
二人の違ったところはそこだった。
戦友は転がっていたボールを拾い上げて、キスをする。小さく「さよなら」と呟いてボールを鬼姫に渡してロッカールームに向かった。
「貴方は最高の選手だよ!」
鬼姫の言葉に戦友は右手を上げピースを贈った。
その姫は渡されたボールを眺める。そして「まだ、続けられる?」とボールに聞いていた。
「さて、私はこれまでだね。鬼姫ちゃんのことは君に任せたよ」
「俺はサポートしかできないよ」
ピッチの横の事務所には鬼姫の夫が待っていた。
「それで充分。いつも彼女を見てなさい。未来ずっと、戦う彼女を」
戦友は鬼姫の夫の背中を叩く。そしてその部屋で子供用のボールで遊んでいる女の子に近付いて顔を近付ける。
「ママ、格好良いよ」
ニコッと笑ってその部屋も離れた。
幼い女の子が今の言葉を気にして照明に照らされた緑の芝生を眺めると、そこにはひたすらボールを蹴る鬼姫が居た。
「言われなくてもずっと眺めてるよ」
これからまだ彼女の戦いは続く。
おわり

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