8人が本棚に入れています
本棚に追加 遠い昔から続く古ぼけた神社。それが私の家だ。
子供のころから良くからかわれた。まあでもそれは「おばけ」なんて子供の考えそうなこと。神社は神様の居場所で、お墓が有るのはお寺の間違いだ。
こんな風に一応私もうちの稼業くらいは理解しているつもり。とは言え、あくまで一応だ。
「こんなオンボロ懲り懲りだ!」
どれだけ親にこんなことを話したろう。売り言葉に買い言葉な部分は有る。それをわかっているのかお父さんはニコニコと黙っているが、お母さんはそうではなかった。
「先祖代々が守ってきたところなのに!」
なんていつも怒られる。因みにこの神社はお父さんの家系で、お母さんは普通に嫁入りした一般人。それなのに怒るのはいつもお母さんだった。
そして私が神社をバカにするのはその古臭い伝統をあまり信じてないから。
確かにうちの稼業としては理解しているし、神社が必要なのもわかっている。それでも個人としては惹かれるものが無いんだ。私はうちの神様に願ったりなんてしない。
だから仕事は家業と全く違うものを選んだ。普通の事務員だ。実家からも通える近さの会社だったけど、家を離れて暮らしている。それは単純に家が好きじゃなかったからだ。
今日も毎日のルーティンをしてから会社に出かける。
「ククルクゥ」
おまじないだ。もちろん神社のものではない。これは世間に知られているおまじない。私は子供のころからこんなおまじないの方が好きだった。
多分そんなこともあってうちの稼業が古臭く苦手に思っていたんだろう。これは流石に両親には言えなかった。
そして会社に向かう。込み合った道を車で進み、やっとのことで会社に着くと書類に追われる。こんなことを続けてもう数年が過ぎている。同期達はもうあんまり残ってない。その理由は寿退社だ。
もう私も売れ残りの年齢になっている。だからさっきのおまじない。あれは会いたい人に会えるおまじない。一応私でも好きな人は居るのだ。
さて、このおまじないの効力が有るのかはわからないが「信じることが一番重要」なんだ。これはお父さんの言葉でもある。神社の神主がそんなことをゆっちゃて良いのかとも思うが、その点に関しては私も同意する。信じてないと叶うものも叶わない。
「あの? それってパワーストーンですか?」
会社で隣に座る新卒だった後輩から聞かれた。

最初のコメントを投稿しよう!