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本棚に追加「こう、ってどんなのなのかな?」
でも、そのひとりごとには返事があった。
慌て振り返るとスマホの護符を落としてしまい、そこにはあの彼がいた。
「お友達が心配して様子を見てきてってさ。調子はどうだい? 少しは血色が良くなったかな?」
確かにまあそれなりに時間が過ぎているので弱い心も少しは落ち着いてた。
しかし、後輩ちゃんを友達と呼べるほど仲良くなったとは思ってない。確かにおまじないのことで意気投合したのだが、これで友達で良いのだろうかと考えてしまう。でも、これも私の悪いところなのかもしれない。もっと気楽に考えても良いのではないかと考えた。
それと一緒に友達ならなぜ後輩ちゃんは彼を寄こしたのだろう。心配しているのはありがたい。でもそれなら後輩ちゃん本人が現れるのが本当なんじゃないのか。仕事はそんなに急がしかったのかと更に考えてしまった。
「ちょっと? 本当に大丈夫なの?」
暫く私の世界で考え事をしていて、彼のことを忘れてしまっていた。普段なら忘れることなんてない彼のことなのに、今日はとことん調子が悪い。
「いえ、本当に大分気分も良くなりましたから」
これ以上彼に心配かけさせるのは心苦しいし、本当にもうどうにか立ち直っている。だから私は彼に向ってできるだけの笑顔を送った。
見上げる彼の瞳はキラキラと閃ている気がしてとても綺麗。そうしていると彼も微笑んでいた。
「なら良かった。僕なりに心配してたんだよ」
なんと嬉しい言葉。私は彼に見惚れてしまって、また言葉を忘れそうになっていた。
「いえいえいえ、そんな私ごときを心配してくださらなくても。あまり知らない人なのに」
どうにか言葉を紡いだ。
しかし、彼はその言葉を聞いてから怪訝な顔になっていた。
正直なところ彼のそんな姿も好きと思えるくらいだけど、彼の機嫌を損ねたなら私の人生での最悪の失敗にもなりそうだった。
「僕からしたらそんなに知らない人じゃないよ。会う度にニコニコと丁寧に挨拶してくれるから、この支社では一番の顔見知りのつもりだったんだ」
なんと、なんと、なんと、彼は私のことを良くご存知だったみたいで、これは涙が出そうなくらいに嬉しかった。
「まあ、それでもあんまり話したこともないしね」
あぁ、次は遠ざかる様な言葉が続く。さっきは嬉しくってどうしようかとパタパタすることしか出来なかったのに、今度は本当に悲しくって俯いてしまった。
「君って、面白いね。気分が良くなったのなら少し話できるかな?」
私の行動を見て彼は笑っていた。ニコニコとしている。それは私にとって嬉しいこと。
「もちろん。なんでもお話を聞きますよ!」
彼と話せる。そんな嬉しい私が一番表に出ていた。
「うん。そうだね、じゃあ、まあ、いきなり聞くけど、君の好きな人って?」
「はいっ?」
もう本当に間髪入れない返答だった。
どうして彼がそんなことを聞くのかと思った。そして私に好きな人がいるのを誰に聞いたんだ。
「それは、どなたから聞いたんですか?」
思いはそのまんま言葉になっていた。
「君の友達だよ。キーホルダーにしてるパワーストーンが恋愛。特に叶いにくい相手だって言うから」
なるほど後輩ちゃんのおまじない知識だったらあのラブラドライトを含めたキーホルダーの意味は読み取ったのだろう。そうなると、まさか彼女は私の想いを知っているのかもしれない。
そうなると彼をこの場に寄こしたのも頷ける。でも、それは親切なんだろうが、私にとっては苦行にもなる。
だって私は告白する勇気なんてこれっぽちもないのだから。
「それは、その、関係ない人ですから」
全く関係が無くない。私の好きな人は貴方なのだから。そう。今のは嘘になっていた。
でも、彼は「ふーん」と頷いてから少し神妙になった。
私はまた心臓が痛いほどに鼓動しているので、気付いたらスマホの護符を握りしめていた。
この護符は恋愛とは別の力がある。弱い私を強くするための護符。今も弱い自分がいることを認識すると、この護符が目から放れなかった。
「あの! 今のことなんですけど」
はっきりと「嘘つきました」と言うつもりだった。ありったけの勇気でそういうつもりだった。その先は私でもどうするのかわからなかったが。
でも、そこまでゆった時に彼が「ちょっと待って」と言い私は口をつぐんだ。
「ごめん。ちょっと気になったから、聞いちゃったんだ。だけど、悪いよね。良いよ。言わなくて」
彼はどこまでも優しい人だ。今になっても私のことを心配してくれている。こんな人に私の想いを届けたい。
だけど、そこまでの勇気はもう無くなっていた。
もしかしたらさっきまでだったら言えたのかもしれない。でも、彼が好きなことが更に大きくなると、断られた時の恐怖が浮んでいた。
そして言葉もなく俯いた私に彼が「ねえ」と言う。

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