ダリルの悪魔×第二幕

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「……教えて、くれない…?」 零が固まっているうちに来稚が悲しそうに眉を寄せる。 子供を悲しませるのはよくない。 ひじょーによくない。 零の中で罪悪感が強くなっていく。 そもそも、何故この少年が吸血鬼のことを知りたがるのか零には皆目見当が付かない。 零が悩んでいる間にも来稚の表情はどんどん曇っていく。 そんな来稚を見てさらに零が悩む。 まさに悪循環。 そんな零と来稚の精神によろしくない循環作用を止めたのは勿論、大魔神架夜だった。 「じゃあお話しましょうか?」 この一言で来稚がぱあっと表情を明るくする。 「…いいのか?」 「ええ。来稚君には権利がありますから。」 「………権利?」 架夜の言い方が引っ掛かる。 権利がある、それはつまり… 「母親が、被害に合われたそうです。」 ぽつりとこぼした架夜の言葉は、零の耳にしっかりと届いた。 確かにそれは立派な権利だと零は納得する。 そして同時にいつか来稚も復讐の為に『意思ある者』の仲間入りをするのだろうかという疑問がよぎった。 「さて…何を知りたいんです?」 「………全部…」 知らない知識について子供は貪欲だ。 全てを知ろうとするのだから。 「…わかりました。あくまで人間が、知っている範囲ですよ?」 架夜が軽く笑えば、来稚も嬉しそうに頷く。 その様子を零が微笑ましく見守る。 話の内容は全く微笑ましくないのだが。 「いいですか?吸血鬼というモノは魔力を糧に生きていると考えられています。 魔力は血に宿り、吸血鬼はその血を啜るからです。 それに吸血鬼が狙う人間の大半がなかなかの魔力を持った人物ですからね。 人間は微力であろうと必ず魔力を持っています。 勿論、来稚君もですよ。」 架夜の吸血鬼講座をこくこくと頷きながら来稚が真剣に聞く。 その様子に満足したのか架夜はなおも続ける。 「魔力を糧に生きる吸血鬼には魔法はあまり効果がありません。 だからこそ自分の魔力が高いと自覚している人間は恐怖を覚えるんですよ。 吸血鬼は異形のモノと言われますが基本的に姿形は人間と変わりありません。ただ身体能力は大きく異なりますが…。 …で、そんな吸血鬼を倒すのが僕達退治屋…『意思ある者』と呼ばれるんですよ。」 にっこりと笑って架夜の吸血鬼講座は幕を閉じた。 image=37961897.jpgimage=37961964.jpg
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