ダリルの悪魔×第二幕

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「……お兄ちゃんたち……強い、の…?」 架夜の長ったらしい吸血鬼講座が終わった後、来稚が二人を見ながら問い掛けた。 ちなみにその視線はどちらかというと架夜の方を向いている。 程よく筋肉が付いており長身な零より、細く華奢で女顔の架夜の方を心配するのは当然といえば当然なのだが。 「おや、これでも退治屋じゃ有名な方なんですよ?」 その視線に気付いた架夜は心外ですね、と付け加えながらやんわりと来稚を睨む。 「……ごめんなさい…。」 やんわりとだろうが、ふんわりとだろうが架夜に睨まれると怖い。 来稚は出会って間もない架夜の本性を見破っているようだ。 こういうところで子供は鋭い。 いつも一言多いため架夜に殴られる零はその能力が欲しいと心の底から思った。 「もう一つだけ…質問、いい?」 「なんですか?」 「どうして…退治屋になったの…?」 来稚が少年特有の純粋な瞳で二人を見上げる。 架夜の瞳が小さく見開かれた。 ――どうして? ―――だってそれは…… 「金だよ、金。」 零が、にやりと笑いながら来稚に告げた。 「吸血鬼退治が上手くいきゃ結構儲かるんだよ。」 「……そう、なの…?」 「そーなの。な、架夜?」 零が架夜の肩に手を起きながら話し掛ける。 「ええ。…退治屋なんて危険なだけで、他にメリットなんて無いですからね。」 それに反応するようにして架夜が来稚に微笑みかける。 何かが、あるんだ。 来稚は確かにそう直感したが、これ以上踏み行ってはいけない何かを感じ、引き下がった。 その後も架夜たちは色々な話をした。 架夜たちが今まで訪れた街の話や、吸血鬼退治の小さな武勇伝。 架夜の口喧嘩無敗伝説から零のイカサマ賭博。 来稚の優しかった母の思い出と、家族を捨てて出ていった父に対する愚痴まで、沢山話した。 話に夢中になればなるほど、その時間が楽しいほどに、 時間は過ぎる。 「………さて、と。そろそろですね。」 不意に架夜が立ち上がる。 世界が紅く染まる黄昏時。 それは、漆黒の闇が世界を飲み込もうと口を開け始める時間帯。 「来稚、俺達仕事に行かねぇと。」 「………そっか…。気を、つけて…ね?」 「おーう。」「ええ、勿論。」 来稚の言葉に二人は笑って同時に返した。image=38719952.jpgimage=38720067.jpgimage=38721055.jpg
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