ダリルの悪魔×第二幕

2/5

24人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
零が煙草を吸いに外へ向かうと、少年もちょろちょろと付いていった。 「……なんで零の方に懐くんでしょう?」 その様子を見て架夜から不満そうな言葉がもれる。 「あの子…来稚(ライチ)が他人に関わろうとするのは極稀だ…。」 神父が嬉しそうに目を細めて呟いた。 「……失礼ですが来稚君は何故此処に?」 架夜の問い掛けに神父の瞳が悲しげに揺らぐ。 「今から八年前…来稚が五歳のとき、あの子は孤児になってしまったんだよ…。」 ぴくりと架夜が反応する。 「もともと母子家庭だったが…吸血鬼に殺されたんだよ。」 「八年前に吸血鬼が…?」 不可解だ、と言わんばかりに架夜が眉を寄せる。 吸血鬼は一度魔力を吸うと連続して魔力を吸う。 八年間魔力を吸わない吸血鬼など…。 「八年前のその一件以来、吸血鬼騒動は無かった…。しかしここ一ヵ月で被害者が増えてしまった。」 どこか遠くを見ながら神父が独白する。 「……違う吸血鬼の仕業、でしょうか…?」 「さてね…しがない年寄りにはわからんよ。吸血鬼のことはあんたら退治屋の方が詳しいだろう。」 そう言うと神父が小さく息を吐いた。 「どうぞ横になってください。」 架夜が微笑んで神父を促す。 さすがの神父も疲れてきたのか一言謝罪をして横になった。 「僕、零達の様子を見てきます。」 神父にそう告げ、架夜は外へと向かった。 架夜が扉を開けると少し離れた所でこちらに背を向けて零が座っていた。 その隣には来稚。 こう見ると兄弟のようでもある。 「仲良いですね?」 「Σ……!!」 後ろから零達を覗き込むようにして架夜が声をかける。 架夜の気配に気付いていた零はともかく、急に声をかけられた来稚は飛び上がらんばかりに驚いた。 「おや…驚かしてしまいましたか?すいません。」 くすくすと笑いながら架夜が謝る。 「…………。」 来稚は少し赤くなりながらふるふると首を振った。 「架夜、いじめるなよ?」 「失礼ですね…いじめてないですよ。」 「どうだかなー。」 「…どういう意味です?」 二人の会話に段々険悪なムードが漂いはじめる。 こういう時、子供は無力だ。 来稚はおどおどと事の成り行きを見ていた。 そして、加熱する口喧嘩に終止符を打ったのは架夜の「……殴りますよ。」宣言だった…。image=37590431.jpgimage=37590535.jpg
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

24人が本棚に入れています
本棚に追加