一話

1/4
前へ
/39ページ
次へ

一話

 イライラする。モヤモヤする。  俺は多分、ずっとそんな感じで生活してる。  窓の外は秋らしく澄み渡っているのに、俺の気持ちは曇り空どころか大嵐だ。  休み時間に教室がザワザワしているのも耳障り。静かにしてくれ鬱陶しい。  考えてることが顔に出ないように努めている俺、杉菜幸哉(すぎなゆきや)の席は窓際一番後ろにある。  一年生で友だち作りに失敗し、二年生でもぼっちな俺にお似合いの、すみっこの席だ。  俺は頬づえをついて、英単語帳をパラパラめくる。  すると、後ろから声を掛けられた。 「杉菜くん、今日の単語テストの勉強中?」  無遠慮に俺の英単語帳を覗き込んできたのは、学級委員の百合根朔(ゆりねさく)。  中性的な顔立ちで、ふんわりとした短い癖っ毛。王子様みたいだって、女子から大人気の男だ。  人の良さそうな笑顔を浮かべる百合根に、俺はうんざりしながらうなずいた。 「うん、ギリギリまで見とこうと思って」 「休み時間に勉強してるの、まじめだー。僕、全然勉強してないや」 「へぇ、そうなのか」  一体、何アピールなんだよ。  勉強してないとか言って、お前はいっつも満点とってるだろうが。  言いたいことを飲み込んでると、隣に固まってた女子たちから声がする。 「朔くん、それでもいっつも満点だよね! すごい!」 「うんうん、勉強しなくてもいいの憧れるー!」  黄色い声に話し掛けられて、百合根の口角が上がった。  わかりやすいやつ。  チヤホヤされるのが目的で、わざわざ俺に話しかけてくんじゃねぇよ。  努力をしなくても結果が出るイケメンは、かっこいいですね。 (それに比べて俺は……)  窓にうっすらと映るのは、美容師に任せっぱなしの真っ黒な髪をした平凡顔。  外見は何もかもが平均的。  存在価値は平均より下かもしれないな。

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加
広告非表示!エブリスタEXはこちら>>