一話
イライラする。モヤモヤする。
俺は多分、ずっとそんな感じで生活してる。
窓の外は秋らしく澄み渡っているのに、俺の気持ちは曇り空どころか大嵐だ。
休み時間に教室がザワザワしているのも耳障り。静かにしてくれ鬱陶しい。
考えてることが顔に出ないように努めている俺、杉菜幸哉の席は窓際一番後ろにある。
一年生で友だち作りに失敗し、二年生でもぼっちな俺にお似合いの、すみっこの席だ。
俺は頬づえをついて、英単語帳をパラパラめくる。
すると、後ろから声を掛けられた。
「杉菜くん、今日の単語テストの勉強中?」
無遠慮に俺の英単語帳を覗き込んできたのは、学級委員の百合根朔。
中性的な顔立ちで、ふんわりとした短い癖っ毛。王子様みたいだって、女子から大人気の男だ。
人の良さそうな笑顔を浮かべる百合根に、俺はうんざりしながらうなずいた。
「うん、ギリギリまで見とこうと思って」
「休み時間に勉強してるの、まじめだー。僕、全然勉強してないや」
「へぇ、そうなのか」
一体、何アピールなんだよ。
勉強してないとか言って、お前はいっつも満点とってるだろうが。
言いたいことを飲み込んでると、隣に固まってた女子たちから声がする。
「朔くん、それでもいっつも満点だよね! すごい!」
「うんうん、勉強しなくてもいいの憧れるー!」
黄色い声に話し掛けられて、百合根の口角が上がった。
わかりやすいやつ。
チヤホヤされるのが目的で、わざわざ俺に話しかけてくんじゃねぇよ。
努力をしなくても結果が出るイケメンは、かっこいいですね。
(それに比べて俺は……)
窓にうっすらと映るのは、美容師に任せっぱなしの真っ黒な髪をした平凡顔。
外見は何もかもが平均的。
存在価値は平均より下かもしれないな。
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