01 父親は錬金術師

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01 父親は錬金術師

 足元に転がった石を自分だと思って蹴り飛ばす。 「青春なんて泥水だよ」  夕焼けが街の奥のほうに吸い込まれてゆく。俺たちの歩く影は、長く細い。  高校二年生という時代は何らかのドラマが起こり得るのに最適の時代だ。後輩も先輩も存在し、高校生活の新鮮味も少し薄れ、受験や就職といったものにせっつかれることもないから。漫画で描かれる高校生は、特別何かその学年で描きたいことがある、という信念がある場合以外はだいたい高校二年生だと思っている。ほのぼのとした日常ものなんて特にそうじゃないか。俺はあまり日常ものの漫画を読まないから、ちょっとよく分からないけど。(じゃあ言うな、というツッコミはよしていただきたい)  そんな花の高校二年生には、そうそうドラマなんか転がっちゃいないのが現状である。だいたいの高校生は、青春という名の泥水をそうとは知らず口にしながらどうにかこうにか日々をやり過ごしている。 「泥水」 「そう、泥水」  そもそも俺を先輩と呼んでくれる可愛い女子の後輩もいなければ、俺を後輩と可愛がってくれる男子の先輩も存在しないのだ。ストーリーが始まらなさすぎる。 「そんなに青春が嫌い?」  一華(いちか)が呆れたふうなため息をついて、ペットボトルの底のほうにほんのわずかに残っていたサイダーを、傾けて飲み干した。口の端からしずくが垂れて顎を伝う。二酸化炭素を含んだ水分は、ぷちん、と弾けて首筋に渡る前に消えた。それをハンカチで拭ってからもう一度、今度は何か思案するような探るような長い息をつく。

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