あのやくそく

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 今そうしているとこっちに向かって走る足音が聞こえる。周りの会社帰りの疲れた足音ではなくて、まっすぐにこちらに向かっている。  そして走り方の癖なんかを私はもう覚えていて、誰かはわかっていた。 「ごめん、待たせちゃった」 「待たされました」  喧嘩して再会した時の言葉はこんなもの。私たちはそんな夫婦なのだ。 「取り合えず喧嘩は辞めようよ」 「それはわかってる。だけど、今回のことは譲れないよ!」 「うん、だから妥協点」  彼も彼なりに喧嘩を終わらせる方法を考えていたみたい。  私はそれを聞こうと彼を見つめる。完全に惚れてしまっている人を見つめるのは飽きない。  そもそもこの場所を訪れた時点でもう私は怒ってなかった。それがこの場所の思い出でさらに浄化された。今は彼の意見を聞き入れようと思っていた。  それが彼の思う通りだったとしても。 「目玉焼きはソースと醤油。どちらも用意する」  あきれるかもしれないが、私たちはこんな程度のことで喧嘩していた。 「それが一番簡単だけど、ちょっとは自分の意見を通してよ」 「僕ばかり我を通したくない」  こんな人なの。もう怒れない。好きだから。  私は彼の横に並んで神社に向かった。 「これからもよろしく」  彼と神社の両方に言う。 「こちらこそよろしくお願い」  並んでのんびりとそう手を合わせていた。 おわり

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