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本棚に追加 今そうしているとこっちに向かって走る足音が聞こえる。周りの会社帰りの疲れた足音ではなくて、まっすぐにこちらに向かっている。
そして走り方の癖なんかを私はもう覚えていて、誰かはわかっていた。
「ごめん、待たせちゃった」
「待たされました」
喧嘩して再会した時の言葉はこんなもの。私たちはそんな夫婦なのだ。
「取り合えず喧嘩は辞めようよ」
「それはわかってる。だけど、今回のことは譲れないよ!」
「うん、だから妥協点」
彼も彼なりに喧嘩を終わらせる方法を考えていたみたい。
私はそれを聞こうと彼を見つめる。完全に惚れてしまっている人を見つめるのは飽きない。
そもそもこの場所を訪れた時点でもう私は怒ってなかった。それがこの場所の思い出でさらに浄化された。今は彼の意見を聞き入れようと思っていた。
それが彼の思う通りだったとしても。
「目玉焼きはソースと醤油。どちらも用意する」
あきれるかもしれないが、私たちはこんな程度のことで喧嘩していた。
「それが一番簡単だけど、ちょっとは自分の意見を通してよ」
「僕ばかり我を通したくない」
こんな人なの。もう怒れない。好きだから。
私は彼の横に並んで神社に向かった。
「これからもよろしく」
彼と神社の両方に言う。
「こちらこそよろしくお願い」
並んでのんびりとそう手を合わせていた。
おわり

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