甘い香りの男の子

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「…ふー。やあっと終わった…。」 咲季が、退屈そうに背伸びをした。 「…。」 私は頷いた。 「…ねぇ、二年って何階?」 「え?あ、4階!」 「えー。…一階から昇るのダルくない?」 「だよね!」 咲季はあんまり気にしてないのかな…。クラス離れた事。落ち込んでるの、もしかして私だけだったりして…。 そんな事を考えたら暗い気持ちになってしまった。 …不安だなぁ…。 顔は自然と床を見つめる。 「…明日香?」 「何…。」 「もう、四階に…」 ドンッ 「きゃ…。」 咲季は、男子生徒とぶつかってよろめいた。 「わ、咲季大丈夫!?」 「いったー…。」 「…悪い、大丈夫?」 細くて少し高い声。 「あ、大丈夫。こっちこそごめんね?」 咲季は、慌てて立つと上を見上げた。 「あれ?」 …居ない。 どこに…。 ! 「俺、ここ。」 下から声が聞こえ、二人同時に下を向く。 「あ!ごめんなさい。」 ぶつかった男の子は 咲季と同じくらいの高さだった。 小柄だけど、男の子らしい顔立ちというか…。 凛々しい感じだ。 「…小さい。」 「コラ!明日香!!」 うわ、口に出ちゃった。 「ごめんなさい!」 すぐに謝ったが、男の子にとったら“小さい”と言われるのはひどく傷つくだろう。 …許してくれるかな…? 「…いいよ!そんな謝らなくても。怒ってないし。」 「え…。」 一言言うと、男の子は居なくなってしまった。 …優しい人だなぁ。 「カッコいい…。」 「は?」 「だって見た?あの微笑み!すっごいカッコいいじゃん!決めた。あたし、あの子狙っちゃう!」 狙うって…。 目がハートになっている咲季を、私はただ横で見ていた。
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